気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!


 俺は少数精鋭の特殊部隊により、強制的に宗像先生から引き離された。
 タクシーの中で、アルファ隊員ことアンナは
「ほら、これで殺せたでしょ☆ 小説の世界でモブヒロインをちゃんと殺してあげてね☆」
 なんて恐ろしい提案を出してくる始末。
 隣りにいた相棒のブラボー、ひなたも便乗する。
「そうですよ~ アンナちゃんの言う通り、ヒロインは私たち若い女の子同士だけでいいよね~♪」
「ね~☆」
 と二人して、俺の頭上でハイタッチ。
 恐怖しか感じられなかった。
 もうこの二人は敵に回したくない。


 俺だけ先に地元である真島に降ろされた。
 二人が言うには、
「もう二度と盗られたくない」
 宗像先生を警戒しているらしく。
 俺が自宅に入るまで、じっとタクシーの中から見守るほど、不安なようだ。
 帰宅して、二階の自室から顔を出してみると、二人は安心したようで、手を振ってタクシーを出発させる。

 その光景を目の当たりにして、俺は地元の商店街にこう叫び声をあげた。
「うちのヒロイン達……半端ないって!」
 直後、スマホが鳴り出す。

 着信名は、北神 ほのか。

 なんだ。休む暇がないな。
「もしもし?」
『あ、琢人くん? 今、暇でしょ?』
 勝手に決めつけるな!
 めっちゃ忙しかったわ!

「まあ……今はな。要件はなんだ?」
『なんか怒ってる? あのね、明日の夜、12時の電車に乗らない?』
「は? 夜中の電車……終電しているだろ?」
『違うよ、明日はオールナイトで電車は動いているよ。博多だから』
 ちょっと言っている意味がわからない。
「要件が見えてこない。ちゃんと説明してくれ」
『あのね。正確には明後日の朝方に、山笠(やまかさ)追い山(おいやま)をやるんだよね。それで取材になると思って』
「ああ……そう言えば、山笠のシーズンだったな。随分参加したことないし、確かに福岡を代表するお祭りの一つだ。小説の取材としては、面白いかもな」
 なんか意外だ。
 山笠の追い山と言えば、血気盛んな男たちが命をかけてまで、競い合うレースだ。
 熱気というか、殺気さえ感じる。お祭り。
 700年以上も続く伝統文化を、腐女子のほのかが見たいだなんて。

『なら、明日の夜に博多駅で集合しましょ♪』
「了解した。徹夜でお祭り気分か、楽しみだ」
『うん。追い山が始まる前に、中洲の無料案内所も取材に行こっか?』
「誰が行くか! じゃあな」
 イラついたので、こちらから雑に通話を切ってやった。

 散々な目にあったから、心身ともに疲弊していた。
 二段ベッドの下で、妹のかなでは、卑猥な男の娘抱き枕を抱きしめて夢の中だ。
 俺も寝るかと、梯子に手をかけた瞬間、再度スマホが鳴り出す。

「もしもし? 無料案内所は行かないと言っただろ!」
 ほのかと思い込んでキレ気味に話す。
『あんないじょ? なんのこと、タクト?』
 ミハイルだった。
 ついさっきまで、アンナちゃんモードだったのに、こいつ瞬間移動できるのか?
「いや……こっちの話だ。要件はなんだ?」
『あのさ、夏休みだし、たまにはオレとも遊ぼうよ……。明日、一緒に“パンパンマン”ミュージアムへ行こうぜ☆』
「ブフーッ!」
 思わず大量の唾を、自分の布団に吐き出してしまった。
 15歳の男子が、あの幼児向けアニメの施設に遊びに行くだと?
 しかも俺と?

「すまん。明日は先約があってな。ほのかとお祭りに行くんだよ」
『はぁ!? なんだよ、それ! お祭りとか……なんで、オレを誘ってくれないの……ひどいじゃん』
 な、泣き出しちゃったよ。
「待て。ミハイル。お前は山笠という祭りを知っているのか? 出店が並ぶような一般的なお祭りとはちょっと違う。漢たちのレースを見に行くんだ。すごくお堅いお祭りだぞ?」
 格好いいんだけどね。
『やまかさ? 知らなぁい~ でも、タクトがほのかと二人だけで行くのはイヤだ! オレも見てみたい!』
「わかったよ……ほのかのやつなら、別にミハイルが一緒でも嫌がらないだろう。なら、明日の夜、博多駅に集合できるか? ヴィッキーちゃんにも山笠だからと、しっかり説明しろよ」
『うん☆ ちゃんと、ねーちゃんに許可もらうよ。夜のピクニックみたいで、楽しそうだな☆ おやすみ、タクト!』
「ああ、おやすみ……」

 夏休みなのに、休めてねぇ!

 深夜の12時。
 この場合、0時と表現すべきか。
 いつもなら、朝刊配達のために仮眠を取るのだが。
 店長に頼んで今朝の仕事は休ませてもらった。

 深夜の駅だというのに、ホームは思ったより人が多い。
 特に博多行きは、家族連れや若者がちらほら見られる。
 時折、スマホを見て笑ってなんかいたりして。

 終電帰りのサラリーマンなんかとは違う。
 どこか非日常的な夜の世界。

 普通列車が到着して、車内に足を運ぶとやはり中も人が多い。
 カップルなんかはちょっとイチャついていたりして。
 うん、殺意湧くわ。
 と一人で拳を作っていると、背中あたりをチョンチョンと指で突っつかれた。

 振り返ると、ネッキーがプリントされた赤い帽子を被った金髪の少年がニッコリ笑って立っていた。
 イエローのシンプルなタンクトップを着ているのだが、肩紐がゆるゆるで、見ていてドキッとしてしまう。
 首元もざっくりと広めのデザイン。肌の露出度が高い。
 ダメージ加工のショートデニムパンツを履いている。
 その為、白く細い二つの美しい脚が拝める。
 足もとは動きやすいスニーカー。

「よっ、タクト☆」
 グリーンアイズをキラキラと輝かせるのは、古賀 ミハイル。
「ああ。こんばんは、だな」
 思わず口元が緩んでしまう。彼を見てしまうと。
「うん☆ なんか夜中なのに、みんなでお祭りに行くなんて、悪いことしちゃってるみたいで、楽しいよね☆」
「確かにな。俺も親に許可を取ったが、深夜に公然と未成年が出歩くってのは、今夜だけだもんな」
「ねーちゃんも『山笠ならOK』だって☆ オレ、今夜のために、お昼寝してきたよ☆」
 お昼寝とは何ともお子ちゃまな表現だな。


 その後、しばらく俺とミハイルは車内で立ちながら雑談した。
 列車に揺られること約30分。
 目的地である博多駅に辿り着いた。
 ほのかは待ち合わせ場所に、黒田節の像を選んでいた。

 真夜中だというのに、改札口から大勢の人々で混雑していた。
 5月に開催された博多どんたくやこの前の大濠公園の花火大会ほどではないが、それでも深夜にしてはたくさんの人で賑わっている。
 幼い小学生や高齢者など、皆伝統のあるお祭りを楽しみに、活気だっているようだ。

 博多口を出て、駅前広場に出る。
 そこでも普段は閉店しているはずの店が、今夜だけはオールナイトで営業していた。
 ビアホールみたいな会場が儲けられていて、大人たちはワインとウインナーを楽しんで騒いでいる。
 その姿を見て、ミハイルは苦笑していた。
「大人になるとこんなことをするんだな☆ でも、うちのねーちゃんの方が飲み方すごいゾ☆」
 なんて自慢げに胸を張る。
 タンクトップの紐が片方少しズレてしまい、胸のトップが露わになりそうだ。
 俺はそれを見て、咄嗟に紐を直してやる。
 無防備な彼の言動を見て、頬が熱くなるのを感じた。
 咳払いして、こう注意する。
「まあ、確かにヴィッキーちゃんの飲み方はエグいもんな。だけど、ミハイル。俺達はまだ未成年だ。今日は山笠とはいえ、深夜だ。迷子にならないように注意しろ」
「うん☆ タクトがついているから安心しているゾ!」
 なんて腰を屈めて、上目遣いで話してきやがる。
 だから、その無防備な態度が、一番怖いんだよ。
 俺の理性がブッ飛びそうで。

 約束した通り、黒田節の像の下に一人の少女がいた。
 相変わらずのスタイル。
 白いブラウスに紺色のプリーツスカート。
 深夜に一人の真面目そうな制服を着た女子高生。
 ナチュラルボブに眼鏡。
 一見すると塾帰りの学生に見えるが……。
 あくまでも、見た目だけ。
 だって、額に変なハチマキを巻いているもの。

『今日はケツ祭り!』

 ニコニコ笑って、こちらへ手を振る。
「……」
 関わりたくない。
「あ、ほのか~☆ 久しぶりぃ~」
 純真無垢なミハイルは、彼女の汚れを知らない。
 駆け寄って、久々の再会を喜ぶ。
「こんばん駅弁バック~♪ ミハイルくん!」
 俺のダチに変な挨拶をインプットすな!
「駅のべんとう? それなら、お土産売り場に売っていると思うけど……」
 ほらぁ~ うちの子はあなたみたいに煩悩が少ないんです。
「ミハイル。覚えなくても良い挨拶だ。ほのか、久しぶりだな」
「うん、琢人くんも、こんばん駅弁バック~♪」
「……」
 こいつが女じゃなかったら、ぶん殴ってやるところだ。

「ん、お弁当のことでしょ? お腹空いているの? ほのか。それなら、どこかで夜食か、おやつタイムにしよ☆」
 ミハイルきゅんがおバカで助かった。

   ※

 俺たちは博多駅を少し離れて、大博(たいはく)通りへ向かった。
 ほのかが言うには、祇園近くの東長寺(とうちょうじ)前、清道(せいどう)が一番追い山のコースで見やすく楽しめるらしい。
 彼女の案内に従って、大博通りを三人で仲良く歩く。
 スマホの時刻を確認すると、『1:45』
 レーススタート地点である櫛田(くしだ)神社から、各神輿が出発するのは、午前5時頃。
 まだ3時間ほどある。
 そこで、俺は大博通り沿いにあるカフェ、バローチェに寄って、時間を潰すことを提案した。
 ほのかもミハイルも喉が渇いたし、一杯飲んで涼んで行こうと承諾してくれた。


 店内に入ると、各々が好きな飲み物を注文する。
 俺はアイスコーヒーのブラック。ミハイルはアイスカフェモカ。ほのかは、宇治抹茶ラテだ。
 四人掛けのテーブルに座る。
 誰がどこに座ると話し合う前に、ミハイルが一番先に奥の席に座り、その隣りに俺を座るよう、イスをトントンと叩く。
 断ると殴られそうなので、黙って従う。


 俺とミハイルは仲良く、並んで座る。
 イスとイスの幅は充分余裕があるというのに、ミハイルは席をぎちぎちに詰めて、太ももを俺に擦り付ける。
 グラスに小さなストローを差し込み、飲み始めた。
「んぐっ、んぐっ……ちゅっ、ちゅっ……ごくっん! ハァハァ……おいし☆」
 お久しぶりです。エロすぎる咀嚼音さん。

 俺は、向い側に座るほのかが一人で座っているのを、ちょっと気の毒に感じ、話を振ってみる。
「なぁ、ほのか。お前ってさ。好きな男のタイプとかってあるのか?」
 マブダチのリキのためでもあった。
 今後のために聞いておきたい。
 すると、ほのかは顔をしかめて、考えこむ。
「うーん……それって、どっちの意味で?」
「は? どっちってどういうことだ?」
 会話にミハイルも入ってくる。

「オレも気になる! ほのかってどんな男の子が好きなの?」
 えらく前のめりで聞いてくるな……。
 そうか、こいつもリキに力を貸したいのか。
 というか、ほのかと俺を遠ざけたいんだろう。

 ほのかは胸の前で腕を組んで、難しい顔をする。
 しばらく唸りを上げたあと、人差し指を立てて、目を見開く。

「ズバリ! タイプとは……受けか攻めか、という質問よね!?」
 テーブルをダンと両手で叩き、身を乗り出す。
 ふくよかな胸がぶるんと震えた。
 きもっ。

「受け? 攻め?」
 ミハイルは脳内がパニックを起こしていた。
「ほのか。BLの話じゃないぞ? お前の好きな男性のタイプだ」
「うん、わかっているよ。だから私も、受けのタイプと攻めのタイプがいるってことだよ♪」
 リキ先輩……腐女子の攻略、なかなか難しそうです。

 俺たち三人が今いるカフェ、バローチェは静まり返っていた。
 先ほどまで、店内はお祭り気分で他の客もワイワイと話で盛り上がっていたのに。
 その原因は俺の目の前にいる、一人の少女のせいだ。

「んとね、私のタイプは幅が広くてね……受けやっている時は、そうだな。自分より身長が高くて身を委ねても大丈夫そうな屈強な人って感じ♪ めちゃくちゃにしてくる野性的な人っていうか、肉食系だよね」
「……」
 この話のモデルってどっちなんだ?
 同性なのか、それとも異性なのか……。
 わからない、この人の感覚がサッパリわからない。
 そもそも受けってどういうことだよ。

 隣りにいるミハイルは、首を傾げていた。
「つまり、ほのかが好きな男のタイプって強そうな奴ってこと? 例えば、オレのダチで言えば、リキとか?」
 気の早いやつだ。しれっとリキをアピールしている。
 つい、この前振られたばかりだというのに。

 ほのかは、また難しい顔で答える。
「うーん。千鳥くんか……確かに男らしい人って感じで、嫌いじゃないんだけど」
 お、意外とまだ脈ありか?
 ミハイルも鼻を息荒くして。
「うんうん☆ リキと付き合うのは、あり? なし?」
 なんて攻めに入る。

「でもなぁ。好みに当てはまらないのも事実かな。だって、紙の世界が一番なんだもん。私の好みがたっくさんいるもの!」
 俺はガタンとテーブルに頭をぶつけてしまう。
 やっぱ、そうだよな。
 腐女子って基本、二次元に恋しちゃって、三次元に対するハードルが高すぎなんだよな。

 だが、ミハイルはそれを認めたくないようだ。
「紙って……それってマンガとかアニメの話じゃん。そのキャラ達と一生片思いして死んじゃうの?  それ、寂しくないの?」
 ぐはっ! オタクや腐女子に一番ズシンとくるやつ。

「なにを言っているの、ミハイルくん……。一生、片思いじゃないわ! 生涯、脳内で相思相愛になれるのが二次元の魅力なんじゃない! 自分の理想通りの男性であり、女性であり、好きなパートナーよ!」
 やっぱり、同性も入ってた!

「ほのか。そんな人生、寂しくないの?」
 ちょっと同情した感じで、話しかけるミハイルお母さん。
『あなたをそんな為に生んだじゃないのよ』
 みたいな感じ。
 だが、そんなママンの言葉に、一切のダメージを負わないのが、北神 ほのかである。
「全ッ然! ちょー楽しいわ! 今日だって生モノ狙いに来たし!」

「ブフーッ!」
 飲んでいたアイスコーヒーを吹き出す。

 こいつ、そのために山笠を狙いに来たのか!
 信じた俺がバカだった……。

 意味が理解できていない、ミハイルが問いかける。
「生モノ? なんかお刺身とか食べたいの?」
「そうよ! サラッと新鮮な奴。活きの良いおっさんやショタがふんどし姿で走り回る伝統芸能、マジ最高! 合法的に絡めること不可避!」
 お前は神に捧げる伝統芸能をなんだと思っているんだ!
 ちょっと、全ての福岡市民、県民に土下座してこい!

「ふーん。山笠ってお刺身をみんなで楽しむお祭りなんだぁ。オレ、今日が初めてだから知らなかった」
 なんて小さな唇に人差し指を当てて、天井を見上げるミハイル。
 きっと言葉にした通り、可愛らしい想像をしているのだろう。


 俺はもう一つ気になったことがあった。
 それはほのかが言った、攻めのタイプの方だ。
 気になったので、今度は俺が質問してみる。リキのためにも。

「なあ、ほのか。受けの好みはなんとなく……わかったつもりだ。じゃあ攻めのタイプはなんだ?」
 すると何を思ったのか、鼻息を荒くしながら、興奮して喋り出す。
「よくぞ聞いてくれました! 攻めの時はとことん、こっちがいじめ倒したいわね♪ 例を挙げるとすれば……あ、ミハイルくんみたいな中性的な男の子が良いわね」
 俺は咄嗟に、隣りに座る彼を自身の左手で護りに入る。
「な、なにを言い出すんだ! ほのか、血迷ったか!?」
 声を荒げると、ミハイルが首を傾げる。
「どうしたの、タクト? ところで、ほのか。なんでオレが、攻めだっけ? それの好みになるの?」
 聞いちゃダメだろ! こんな変態の性癖。
 ミハイルきゅんは絶対に渡すものか!

 彼の質問に対し、興奮しすぎたせいか、鼻血をポタポタと垂らしながら、物凄いスピードで喋り出す。
「そ、それはね! ミハイルくんみたいな、ショタっぽい……いえ、まだ未成熟な蕾をいたぶる。本能のままに、とことん可愛がってあげるのが、私の愛し方だからよ!」
 クッソ変態じゃねーか!
「でも……残念なことに、ミハイルくんは、私の中ではアウトね」
「え? なんで?」
「ちょっと、ショタにしては成熟しすぎちゃっているからよ! 私は、思春期を迎えるか迎えないか……。すごく曖昧な年頃が一番大好きなの。だから、ごめんなさい。ミハイルくんは攻めの対象には当てはまらないわ」
 なんて眼鏡をくいっとかけ直す。
 それを聞いた俺は胸を撫でおろした。

 ミハイルは、ほのかの抱く変態理想像。
 表現、伝え方がサッパリ届いていないようで。
 困惑していた。

「ん? じゃあオレよりもっと若い子が好きってこと?」
 いや、あなたは今15歳でしょ?
 それより下ってヤバいだろ。犯罪だよ。

「そういうことよ! 私の守備範囲は、8歳ぐらいから13歳ぐらいね! その子の成長具合にもよるけど、股間がフサフサしていたら、ダメよ♪」
 ファッ!?
 ミハイルの股間は、ツルツルだった!
 ヤバい!
「え、お股がフサフサ? オレはしてな……」
 バカ正直なミハイルが、真面目に答えようとしたので、すぐにその小さすぎるお口を、俺が寸止め。
「ふごごご……」
 なんとか彼の操を護ることに成功した。

「ほのか。お前の好みはなんとなくだが、把握できた。良い勉強になったよ」
 このまま、どうにか話をそらして、逃れよう。
「本当? 良かったぁ~ 私の好みが分かり合える友達が出来て♪ あ、でも、私の守備範囲は性別とか関係ないからね。可愛いければ良いし。カッコイイ人だったら何でもOK。人種も性別も曖昧なの♪」
「……」
 この人に勝てるのか? リキ先輩。

 ほのかの異性、同性に対する趣味、性癖は把握できた。
 理解はできないけど。
 要は可愛ければ、ショタだろうが、ロリだろうが手を出す。
 顔さえ良ければ、イケメンだろうが、美人だろうが受け入れる。
 なんだ……飛びっきりのドがつく変態さんだったのか。
 よし、ミハイルは俺が守る!


「なあ……ほのか。逆にこういう男、女。まあ、人間で嫌いなタイプはあるか?」
 これもダチであるリキのためだ。
「あぁ、それなら割と簡単かな? イケメンでもカワイイ子でも……なんていうかな。オレ感とかワタシ感出してる人は苦手だね」
「ん、つまり自己主張が激しい人間ということか? 自分のルックスや能力を自慢げにしている奴とか?」
「そうそう! 正にその通り、なんかねぇ。男でも女でも、それをステータスに感じている時点で、終わりじゃない? 常に貪欲に生きる人。ルックスも人生もまだまだ満たされないっていう、性格の方が好きかな。だって、今の自分で満足しているってことは、劣化すること間違いなしだよね♪」
 隣りで話を聞いていたミハイルが、何やら胸に突き刺さったようで、心臓あたりを手で抑えている。

「そ、そうだよな……ハーフって年を取るとブサイクになるって、よく聞くもん。この前、ガーリーファッション雑誌にも特集で載ってた。ひっぐ……」
 おいおい、泣き出しちゃったよ。
 しかも、アンナちゃんの愛読書をバラすな。
「ミハイル、そんな噂に流されるな。お前もアンナも、いい年の取り方をするさ。ほのかの言う通り、自分に満足しなきゃいいのさ」
 なんて肩をポンポンと優しく叩く。
「う、うん! オレも頑張る! アンナにも伝えておくね☆」
 いや、今目の前で口頭にて伝えたじゃん。


 しかし、今の感じでは、リキと比較してみても、嫌いになる要素が抽象的な表現でよくわからない。
 もっと具体的なことを知りたい。

「ほのか。人柄とかで嫌いな奴はなんとなく理解できた。そうじゃなくて、もっとなんていうか……例えば、俺だったら巨乳の女性が苦手だ。こういうのはないか?」
 しれっと『ほのかを嫌い』だと宣告してしまう。
 だが、彼女は別に気にしない様子で、答えてくれる。
「ああ~ そういう感じね。これやる人嫌いってことだよね? なら、簡単だよ。一番はタバコを吸う人。あれ、臭いがきついし、目にしみるから大嫌い。吸って吐いて、なにが楽しいの? お酒ならまだ許せるんだけどね。だって酔っぱらうと、ノンケでもワンチャンありそうじゃん♪」
 要らない情報を追加するな!
 しかも、それ犯罪だって!

「なるほど……意外だな。その意見は俺も一緒だ。タバコは百害あって一利なしと言うからな。ハハハッ、思わぬ所で一致しておかしいな。やっぱあれだな。なんだかんだ言っても、俺たちはヤンキーと違って、根は真面目だな」
 そう言って、ほのかと笑い合う。
 ていうか、初めて共感できたところかも。


 だが、一人喜べない人が、隣りに。
 元喫煙者であるミハイルだ。
 俯いて、太ももの上に拳を作り、プルプルと震えている。
 頬を紅潮させ、涙目。
 自分だけ、仲間外れにされた気分なのだろう。

「ミハイル。お前はもうタバコはやめたんだろ? なら、俺たちと同じ非喫煙者の仲間じゃないか」
「そうよ、ミハイル君もズル剥けしたってことよ♪」
 表現方法を間違えるな!
「そ、そうだよな……って、ああっ!」
 急に何かを思い出したようで、席から立ち上がるミハイル。
 小さな口をポカーンと開き、言葉を失う。

「どうした? ミハイル……」
「ヤバいよ……リキのやつ、まだ吸っているよ……」
 俺もそこでようやく気がついた。
 ほのかに惚れているリキが喫煙者であることを。
「あっ!」
 そこからの俺とミハイルの行動は速かった。
 互いにスマホを取り出し、メッセージを打ち込む。

『リキへ。早くタバコを捨てろ。服の臭いをファ●リーズで消せ。そうしないと、ほのかに嫌われる』
 と俺は送信。
 これでよし。
 辞められるかは、あいつ次第。いや、ほのかに対する想いの強さか……。

 隣りのミハイルに送信したことを伝えると、彼はかなり焦っていた様子で、未だにスマホとにらめっこ。
 高速でスワイプしまくっていた。
 隣りからチラッと画面を覗き見すると。

『リキのバカ! 早くタバコをやめろ! やめないとダチじゃない。人間じゃない。お前なんか大嫌いだ! 好きな女の子のためなら、タバコなんてやめれるだろ! 最低の人間、クズ、バカ、アホ、役立たず、うんち、このハゲ……』

 なんて罵詈雑言を延々とメッセージに打ち込んでいた。

 リキ、この困難を必ず乗り越えよう。
 応援しているぜ。
 正直どうでもいいけど、ダチも惚れた女も全部失うぜ……。

 カフェでしばらく雑談をしていると。
 気がつけば、窓の外には青白い光りが……。
 スマホでも時刻を確認すれば、もう午前4時半に。

 それをほのかに伝えると、
「じゃあ、急ぎましょ! 良い場所が埋っちゃう!」
 なんて慌てて、テーブルから飛び上がる。
 俺とミハイルも急いで、彼女の背中を追いかけた。


 祇園(ぎおん)町には既に大勢の見物客で、賑わっていた。
 ほとんどが立ち見。
 あと地元の人が多く感じる。
 神輿を担ぐことができない女性陣や老人、他にも寝ている幼い赤ん坊を抱いた主婦が、道路の隅に立っていた。
 見物客もプロ顔負けの大型カメラを三脚で固定してスタンバッていた。
 辺りは、異様な熱気で包まれている。
 今か今かと、追い山の開始を待つ。

 どこからか。野太い男たちの掛け声が聞こえてくる。
「イサ……イサ……」
 きっと、櫛田神社から出発した一番山笠だ。

 追い山とは、シンプルに説明すれば、タイムレースだ。
 チームは七つに分かれており、地区ごとに選出されている。
 また山笠というものは、古来から続く神事であり、時に命を落とす……そんな危険なお祭りだ。
 色々と厳しいルールがあると聞く。
 その地区の町民にならなければ、参加できないことはもちろん、神輿をすぐに担ぐなんて言っても、きっと直ぐには受け入れてもらえないのだろう。
 年間行事であり、本気の人間、博多の男になることができない半端者は、下手したら力づくで追い出されるのかもしれない。
 血気盛んな男たちが、それぐらい真剣に、先祖代々、受け継いで行く儀式なのだ。

 俺みたいな貧弱な男では、あんな巨大な神輿は担ぐことは愚か、そのスピードについては行けないだろう。
 高さ4メートル、重さ1トン。
 人間離れしたアスリートレベルの男たち。

「オイサ……オイサ、オイサ!」

 段々と声が近くなる。

 ふと、辺りを見回すが、ほのかが見当たらない。
 ミハイルに尋ねると、
「ほのか? 一番前の方にいるよ」
 なんて道路を指差す。

 ガードパイプに腰を掛けて、スタンバッていた。
 小型の三脚にスマホを装着し、どうやら既に録画しているらしい。
 膝にタブレットを置いて、右手にはペン。
 眼鏡を怪しく光らせて、ニヤつく。

 あいつ、もう生モノの素材にする気マンマンじゃねーか。

 神聖な儀式を汚しにきやがって……。

 太鼓の音と共に、地響きを立てて、神輿を担いだ男たちが、こちらへと向かってくる。
 その顔つき、まるで、戦争に向かう兵士のようだ。
 見ている俺たちにもその情熱が伝わってくる。
 腹にまで響く男たちの掛け声。

「オイサ! オイサ! オイサ!」

 辺りで待っていた見物客でさえ、その迫力から、後退りするほどだ。

 だが、一人の少女だけは、微動だにせず、じっとその光景を楽しんでいた。
 北神 ほのかだ。

「ふひゃーひゃっひゃひゃ! 生ケツのオンパレードじゃ! ハァハァ……おっさんもお兄さんもふんどし姿やないかい! こりゃ、たまらんのう! これが本物の取材だってばよ!」

 神輿を担いでいた血気盛んな男たちですら、ほのかの姿を見て、ドン引きしていた。

「な、なんだ。あの子……」
「暑さにやられたんじゃないか?」
「かわいそうに。あの若さで頭がイカレてしまったのか」

 うん、間違ってはないのかも。

 その後、幼い子供たちがよちよちと可愛らしく走っている姿を見たほのかは、発狂する。

「ひゃひゃひゃ! これぞ、合法的にショタを視姦できる年一のコミケだぁ!」
 そんなもんと一緒にすな!

「あっひゃ! ひゃっ~ひゃっひゃっ!」
 オフィス街に響き渡る奇声。
 その声の持ち主は……ただの女子高生であり、ただの変態である。
 北神 ほのかだ。

 命がけで神輿を必死に担ぎ、走っている男たちの生ケツを楽しみ、スマホで録画し、既に生モノとして、タブレット内では、激しく絡み合っている。
 後ろをよちよちと歩く可愛らしい子供たちでさえ、素材に使われてしまう。
 確かに祭りを楽しむのは、個人の自由だ。
 しかし、神事である山笠をここまで、汚していいものか。


 俺とミハイルは、ほのかから少し離れたコンビニの駐車場で待機していた。
 車止めブロックを腰掛けにして、仲良くケツとケツを合わせる。
 隣りにいるミハイルは、居眠りしている。
 時折、首をカクンと落としてしまうのを、見兼ねた俺が自身の肩を貸してやる。
「タクト……お祭り、楽しいね……」
 寝言か。
 ていうか、どこが楽しいの?

 俺たち、なにをしに来たんだよ!
 ほのかのやつは、一人暴走して、勝手にふんどし姿を絡めやがるし、ミハイルは寝るし、俺は素直に追い山を楽しめてないぞ。

 深いため息を漏らすと、ジーパンのポケットからブーッと振動が響く。
 スマホにメールが届いたようだ。
 確認すると、送信者はリキだった。

『よう。朝から悪いな。メール見たぜ! 早速、愛しのほのかちゃんのために、吸っていたタバコは全部捨てておいたぜ。教えてくれてサンキューな、タクオ!』
 恋の力は偉大だな。
 ヤンキーの喫煙まで、こうも簡単に止めてしまうとは。
 感心するぜ。

 俺はリキに
『礼はいらん。ダチとして当然のことをしたまでだ』
 と返信。

 すると、すぐに新たなメールを受信。
『あのさ。悪いんだけど、この前のミハイルのいとこ。アンナちゃんに会わせてくれないかな? ほら、俺とほのかちゃんが良い仲になれるよう、協力してくれるって言ってたからさ』
 ファッ!?
 色々とめんどくさい!

 だが、俺とアンナが出しゃばったのも事実だ。
 ここは彼に協力した方がいいだろう。

『わかった。アンナにも伝えておく。とりあえず、この前みたいに一人で突っ走るな。ほのかは難しい性格だ。まずは同じ趣味。共通点を作ろう。友情からの恋愛にも発展するかもしれん』
 正確には、ほのかの興味はハッテン場だがな。
 リキからまたメールが届き。
『マジ、サンキューな! 取材だっけ? 俺、めっちゃ頑張るわ!』
 えぇ……めっちゃ頑張っちゃダメだろ。
 俺が一人頭を抱えていると。

「うひょおおお! ふんどし、ケツ毛、ショタのツルツルお股最高かよ!」
 なんて発狂するリキの想い人が。
 あんな変態の落とし方、わかるかよ。

 どうしたものか……。
 ここは身近な腐女子たちに、意見を求めるとするか。
 手始めに母さんと妹のかなで辺りか。
 果たして、どんな攻略法をご教授いただけますやら。
 うーん。不安しかない。

「タクトォ……今度は、パンパンマンミュージアムが良い~」

 俺の肩で気持ち良さそうに眠る、ミハイルはこんなにも可愛らしい趣味をしているというのに。

 山笠は無事に終了した。
 今年の夏は、誰一人として、ケガもなく死人も出ず、最高に盛り上がったお祭りだった。
 しかし……俺の中で終わらなかったものがある。

 それは、腐女子である北神 ほのかの攻略法だ。
 どうやったら、あんな変態とヤンキーを恋仲に出来るというのか。
 無知な俺にはわからん。さっぱりだ。
 もうお手上げ。
 だって、ほのかのやつ。
 追い山を見たあと、鼻息荒くして。
「私、すぐに家に帰るわ! 忘れる前に早く生ケツで絡めたいもの!」
 なんて徹夜明けで、創作活動に勤しんでいたものな。

 同じ創作者として、あの情熱を少し分けてもらいたいぐらいだ。
 ただし、変態の部分はカットして……。

 だが、マブダチのリキには助力したい。
 その恋が叶うことは無くても、少しでもあの二人が仲良くなってほしい。
 俺が想う……この心に噓偽りはない。

 自室で机の上においたノートパソコンで、
『腐女子、恋愛』
 なんてネットで検索しても正解が見えてこない。

 仕方ない。
 うちに成功例が一人いるじゃないか。
 真島のゴッドマザーこと、琴音母さんだ。

 リビングに向かうと、テーブルに座る妹のかなでが目に入る。
 珍しく勉強をしていた。
 そうか。こいつも中学3年生の夏だものな。
 ぼちぼち高校への試験勉強か。

 顔を真っ赤にして、教科書とにらめっこ。
 なにやら不機嫌そうだ。
 近寄って見ると、英語の参考書だ。
 正直、俺の通っている一ツ橋高校の問題より難しそうだ。

「クソがっ! ですわ!」
 かなりストレスが溜まっているようだ。
 いつも男の娘の18禁ゲームで遊んでいる変態妹の顔ではない。

 キッチンで皿を洗っていた母さんが俺に気がつく。
「あら、タクくん。どうしたの?」
 相変わらず、裸の男たちが絡み合ったBLエプロンを首からかけている。
 いつ見ても痛い光景だ。
「母さん。ちょっと質問があるのだが……」
 すると、近くで勉強していたかなでが、ブチギレる。
「おにーさま! 集中できませんわ! おっ母様とお話されるなら、離れた所でしておくんなまし!」
 怒られちゃったよ。
「わ、悪いな。試験勉強中に……」
「そうですわ! かなでは高校なんてどうでもいいのですけど。おっ母様が進学校を勧めるから勉強を無理してやっているのですわ! あー、イライラするぅ! 合格するまで男の娘ゲーで抜けないなんて! あー、発狂しそうですわ!」
 盛りのついた受験生だこと。

 俺は自室に戻って、母さんと二人で話すことにした。
 だが、リビングから離れる際、かなでの怨念のような独り言が聞こえてきた。

「あ~ ケツ……マンホールって、言いたいですわ! 男の娘とショタのプリッケツンのマンホール! マンホールって叫びたいですわ! マンホール……マンホール……マンホール……」
 言ってるじゃねーか!


 自室に戻って、不安を感じた俺は母さんに訊ねる。
「質問の前にいいか? かなでのアレ。大丈夫なのか?」
「えぇ、腐女子の受験生なら、誰しもが経験することよ。懐かしいわ。母さんもおばあちゃんから薄い本を奪われた時は、問題の空白を全部、ケツで埋め尽くしたものよ」
 なんて天井を見上げながら、思い出している。
「母さん。腐女子ってそういうものか?」
「そうよ~ 愛らしいでしょ」
 どこがだ! 普通に怖いわ!

 俺は今悩んでいるリキのことを母さんに相談した。
 腐女子である、北神 ほのかの臭そうなハートをどの様に落とすべきか。
 ここは、先駆者である親父の六弦に聞いた方が早そうだが、あいつはすぐに金をせびるので、無視した。
 母さんは一連の流れを聞いて、「わかるわかる」と頷いていた。

「なるほどなるほど……。つまり、そのリキくんという子は、女の子を見る目があるのねぇ~ ズバリ! 男にとって腐女子は、アゲマンよ!」
 予想を上回る回答が出てきたので、イラッとした。
「母さん。真面目に相談しているんじゃないか……もうちょっと、具体的な答えが欲しいんだよ」
 俺はため息をついて、頭を抱える。
「でも、本当のことよ? 六さんも私と出会ってイケメンになれたわよ~ 仕事もルックスも♪」
 いや。あんたの旦那は無職だろ。
「それで……母さんは、親父のどういうところに惹かれたんだ? 顔か、性格か?」
 正直、親の馴れ初めとか聞きたくないが、ダチのためだ。
「いいえ。顔でも性格でもないわ。ズバリ! 初めてを捧げたのが六さんで、身体の相性がバツグンに良かったのよ~ 思い出しただけでも、びしょ濡れになりそう~!」
 なんて頬を赤らめるアラフォーのおばさん。
 しんどいわ。

「そういうんじゃなくて……なんか腐女子の人って、こう……ルックスに厳しいイメージがあるんだけど。二次元並みに美青年とか……リキってハゲのマッチョなんだよ。それでも脈があると思うか?」
 母さんはそれを聞いて、腹を抱えて笑い出す。
「ハハハ! ちゃんちゃら可笑しいわ! そんな二次元の世界にいるような男子が現実世界にいれば、腐女子たちに逆レ●プされるわよ。ないない。もし、そういう幻想を抱いている若い腐女子がいるのなら、恋愛なんて無理な話よ」
 しれっと、自分の願望を暴露しやがったよ。この母親。
「じゃあ母さんは、親父のことをどんな風に見ているんだ? 好みのタイプに当てはまるのか?」
 すると腕を組んで、自慢げに語り出す。
「六さんはドンピシャね。母さんの好みは年上の男性。子供ぽくない人よ」
 意外だった。すごくシンプルな答えだったから。
「年上か……大人の男って感じが好きなのか。確かに親父は母さんより、何歳か年上だったもんな」
 なるほどな、と顎に手をやる。
 確かに母さんの言う好みに、当てはまる。
 二次元に対する情熱と、現実世界の恋愛はまた別物なのか。

「でも、年上っていうタイプは、あくまでも受けの時よ♪」
 人差し指を立てて、優しく微笑む。
「え?」
 なんかこの前もこういう展開があったような……。
「攻めのタイプは、絶対年下に限るわ! そうねぇ、具体的に表現するなら、14歳から16歳ぐらいの男の子がいいわ!」
 その変態発言に、思わず身震いを起す。
「ど、どういうことだ? 何故、そんなに年齢を限定するんだ?」 
「決まっているじゃない~ 反抗期のショタをいじめ抜いて、性奴隷にするのよ♪」
 このクソ母親、なんてことを息子に言いやがるんだ!?
「か、母さん? ウソだろ?」
「いいえ~ 普通のことよ。腐女子ならショタは絶対に外せないわ」
 俺はその性癖を聞いて、一つの不安が脳裏を過る。
 ミハイルのことだ。
 あいつは、今15才だ。
 ちょうど母さん的に、食べごろなのでは?
 しばらく彼を自宅に連れてくるのはやめておこう。