「名前は?」
「あ、はい……新宮 琢人です。17歳です」
俺がそう言うとボディコン女は顔をしかめる。
「お前が17だぁ?」
「そうですが……」
長身のためか、腰をかがめて俺の顔を覗き込む。
まるでグラビアのポーズだな。巨乳がブルンブルン揺れて、キモいからやめてくれ。
「ふむ、つまりお前は本来なら高校二年生というわけか?」
「本来? その定義がどこから来ているかはわかりませんが、俺はこれでも社会人です。そこらの子供っぽい学生と一緒にしてもらっては困ります」
「……」
するとボディコン女は目を見開いて、黙り込む。
フッ、やはりこの天才の前じゃ、大人様はいつも論破されまくりだな!
「だぁはははっははは!」
腹を抱えて大笑いする。
あごが外れそうなくらい口を大きく開けて、女とは思えないくらい野太い声で笑う。
げ、下品な女だ!
それになんか酒臭い。酔っぱらっているのか?
のどちんこが丸見えだ、恥ずかしくないの?
「なにがおかしいのですか?」
「お、お前は……クックク……ど、ど、どうしようもないクズだな!」
スクラッチしてんじゃねーYO!
あー苦しいと腹を抱えて、床で笑い転げる。
まあその隣には白目をむいたロリババアが倒れているのだが。
俺はこの時思ったね、こんな大人にはなりたくないYO! とな。
「じゃあ案内しよう」とボディコン女が気絶した白金の首根っこを片手で掴み、廊下を歩く。
「あの、あなたは一体……」
「ああ。紹介がまだだったな。私は一ツ橋高校の責任者でもあり、日本史の教師。宗像 蘭先生だぞ♪」
自分で先生言うな。
俺が認めるまで、お前はただの痴女だ。
「そうですか……あの、宗像先生はそのロリババアとは同級生と聞きましたが……」
「おまえ……今『ババア』って言ったか?」
立ち止まって、俺に睨みを聞かせる。
その顔っていったら、あれだよ。仁王像だよ。
「いえ……白金とはお友達だとか?」
「そんなお洒落な関係ではないよ……このバカとはただの腐れ縁だ」
やはりアホとかバカで通っているのではないか、白金 日葵。
※
「着いたぞ、ここが一ツ橋高校だ」
「え、これが?」
めっちゃ小さな事務所だ。
しかも扉もボロボロ、中をのぞけるように四角い小窓があるんだけど、ヒビが入っとる。
「この部屋だけが一ツ橋高校なんですか?」
「ああ、その通りだ。白金から聞いているだろうが、あくまでも三ツ橋高校の姉妹校であって、本校一ツ橋は校舎を持たない」
「では、一体どうやって勉学するのです?」
「そのためのラジオだ!」
ニッコリ笑って、扉を開く。
軋んだ音を立てる。
まるで、ホラー映画の開幕シーンのようだ。
俺は奥にある茶色のソファーに通された。
まだ白目をむいているロリババアは無残にも床に捨てられた。
テーブルを間に挟んで、反対のソファーに宗像先生は腰をかける。
その際、言うまでもないが、宗像先生のおっぱいがぼよよんと跳ね上がる。
「白金から話は聞いている。じゃあ、願書だしてくれ」
え? 見学じゃなかったの?
「はい……」
俺はバッグから茶封筒を取り出し、テーブルの上においた。
「ふむ……」
宗像先生が書類を目を通している間、俺は事務所内を見渡していた。
殺風景で、職員も誰一人いない。
こんな小規模で百人以上の生徒がいるとは思えんな。
「おい、新宮」
呼び止められて、視線を合わせる。
「書類は全てそろっている。合格だ」
「は?」
「だから合格だ、これでこの春から晴れてお前は一ツ橋高校の生徒だ」
ファッ!
「え? 入学試験はないのですか?」
「ないよ、そんなもん」
キョトンとした顔で、先生は俺の反応を待つ。
「だ、だって普通は試験があるでしょ? せめて、国語、数学、英語くらいは……」
「ねーよ、んなお利口な学校じゃないぞ、ここは!」
じゃあなんだよ! 二十字以内で答えてみろ!
「マ、マジですか……」
「大マジだ」
バカみたい……俺、年末からめっちゃ中学校の教科書、復習してたのがバカみたい……。
こんなことなら年末のタウンタウンの『絶対笑えTV二十四時間』見ればよかったよ。