「この世から去っても、相変わらずモテるんだな、兄貴は」


そんな嫌味を言ったものの、胸が痛むのはなぜだろうか。




     ***




「白石とケンカでもした? 最近、全然一緒にいないじゃん?」


それから一週間ほどたったある日の放課後。

帰ろうとしたら、深澤先生に呼び止められて社会科教材室に来いと言われた。

今度は何なんだと思いながらも、素直に呼び出しに応じる。

部屋に入るなり、そう聞かれて僕はため息をついた。


「ケンカっていうか、僕が元の日常に戻っただけです。ルカはもう道を覚えたし、残りわずかとはいえ、このクラスでちゃんと同性の友達を作らないと」

「あらら。だいぶ冷たい事言ってない? 絶対何かあったっしょ? だってバレンタインにキャンディ贈られたんだから、進展あっても良さそうなのに、何で悪化してんの」


深澤先生は頬杖ついて、呆れたように聞いてくる。

いや、呆れたいのはこっちなんだが。

そもそも僕にキャンディを贈ったわけじゃなくて、間接的に兄貴に渡して欲しかったんじゃないのかって思った。

それならキャンディだった理由も説明がつく。