「お昼も悪いけど、もう一緒には食べない。勝手な事言って、ごめん。お邪魔しました」


早口で小さくそう言うと、逃げるようにドアを開けて外に出た。

冷たい空気が肌を突き刺す。

エレベーターを待っていたらルカが追いかけて来そうだったので、僕は階段を駆け下りた。

一気にこんなに階段を駆け下りた事なんかなかったから、途中で足がもつれて転ぶかと思った。

何とか無傷でマンションを出て、一度も振り返らずに家に帰る。

真っ直ぐ二階の自分の部屋にあがり、机の上に置いてあったボトルキャンディを掴んで、再び一階に下り、そのまま和室に入った。

ドンと音をたてて仏壇にボトルキャンディを置き、僕は息を吐きだす。

遺影のそばに積み重なっていた便箋は、やっぱりさっき見た物と全く同じ。

中を開けて確認しなくても、差出人はルカだろう。

赤いギンガムチェックの派手目の便箋。

こんな狭い範囲で、同じものを持っている全くの別人って考えるには少し無理があると思う。

兄貴と繋がりたかったっていう理由なら、全てのつじつまが合う。

多少強引かもしれないけれど。