「思ったより寒かったね。外出る格好した方がいいね」

「確かに」


苦笑したルカの言葉に同調しながら、僕はコートを羽織ってマフラーを巻く。

ルカもコートを羽織ろうと腕を伸ばした拍子に、ポケットから何かが落ちた。

フローリングの上に落ちたせいか、無音だったのでルカは気が付いていない。


「ルカ、何か落ちた……」


そう言いながら拾い上げようと手を伸ばすが、途中で止める。

落ちていたのは便箋。

これと全く同じものを、僕は自分の家で見た事があった。


「うん? あ、これね」


ルカが足元に落ちていた便箋に気が付いて拾い上げる。

宛名も差出人も書いていない、その便箋。

兄貴の仏壇に積み重なっていたものと同じで、違うところと言えば、封がまだされていないところ。

……ああ、そうか……そうだったのか。

ルカは僕に興味があったんじゃなくて、僕を通して兄貴と繋がりたかったんだ。

便箋を見た瞬間、ルカの不可解な言動の意味がようやくわかった。

僕に気がある素振りを見せて、信用させたうえで兄貴と繋がる。

今まで、この戦法をとってきた女子は一人もいなかったから、全く気が付かなかったよ。

だから、一方的に知ってるって言ったのか。