聞いても答えてくれないのなら、知らなくていい、知らない方がいいという事なのかもしれない。

ただの変わり者だと思えば問題なさそう……って、こんな結論でいいのか?

危機感ないって言われるかもしれないけれど、ルカから危険な感じはしないんだよな。

悲しい事に兄貴と比較されるようになってから、あまり人を信じる事ができなくなって、結構人間観察をしてきたから、人を見る目はある方だと思う。

そういう理由で、深澤先生の事を僕は全面的に信頼しているわけだし。

何よりあの人は、適当でめんどくさがりやのくせに、一度だって僕と兄貴を比較した事がなかったから。


「そうだ。せっかくだからベランダに出てみる? ちょっと寒いけど」

「あ、見せてもらおうかな」


この高さからこの街を眺めた事なんてないから、かなり興味があった。

ルカがベランダに出るドアを開けると、冷たい空気が部屋になだれ込んでくる。

思わず顔をしかめると、ルカが一度ドアを閉めた。