「悠真君、ドラマの見すぎだよー」

「それは自分でも思ったけど、他に理由が思いつかなかったから」

「大丈夫。前の学校の友達ともメッセージのやり取り毎日してるし、健康状態も問題ないよ」

「じゃあ……何で?」


どちらでもないのなら、親の仕事の都合だろうか。

何にせよ、重い理由じゃなくて良かった。

僕が聞くと、ルカは紅茶の入ったカップに口を付けた。


「悠真君に会いたかったから……かな?」


……は?

いやいやいや……。


「本気で言ってる? この間も言ったけど、ストーカーみたいで怖いんだけど」

「あ、ゴメンゴメン。何の説明もナシに結論だけ聞いたら確かに怖いよね」

「いや、説明あっても怖いし。……この前、話しても信じてもらえないとか言ってたけど、説明ってそれ?」


転校初日に、僕の事を知っている理由を聞いたけれど、答えてはくれなかった。

でもきっと、今聞いてもまた、上手くはぐらかされるんだろうな。

ルカからのまともな回答を得られるとは思えず、僕も紅茶の入ったカップに口を付けた。


「だって、悠真君って運命的な出会いを信じてない人なんでしょ?」

「まあ、そうだな。え、やっぱり僕とどっかで会ってる? 全然記憶にないんだけど、これってかなり失礼な事してる状態?」

「ううん。私が一方的に知ってるだけだから、大丈夫」

「大丈夫って……僕的には、全然大丈夫じゃないんだけど」


首を傾げながら、僕はクッキーを一枚口に入れる。

チョコレートは苦手だけど、マーブルクッキーなら全然大丈夫。

しかもこれ、かなり美味しい。