「うちね、ベランダから海が見えるんだよ」

「そうなんだ? じゃあ夏になれば美浜海岸で花火大会があるから、よく見えるね」

「そうなの?! 今からかなり楽しみ~! あ、その時は一緒にうちから花火見ようよ。それともちゃんと会場に行って見た方がいいのかな? どっち派?」


どっち派……。

小学生の頃は、家族でよく見に行ってたけど、兄貴が中学に入ってからは行かなくなったっけ。

兄貴は友達に誘われて、毎年行ってたみたいだけど、僕はあまり人ごみが好きじゃないから、ドンという花火の音を自室で聞いていた。

うちからは花火は見えないから。


「その時は、一緒に浴衣を着ようね」

「着ようねって……僕じゃなくて、そういうものは彼氏に言うんじゃないの?」

「私に彼氏がいない事わかってるのに、どうしてそんな冷たい事言うかなー?」

「夏までにできるかもしれないだろ」


僕が言った時、エレベーターが7階に到着し、静かに扉が開いた。


「私は、悠真君と見たいんだってば。……あ、でも、悠真君に彼女ができちゃったら一緒に見られないね」


フフッと笑って、ルカが先にエレベーターから降りた。

僕に彼女なんかできるわけがないだろ。

それこそ冷たいし、意地悪だと思うんだけど。