「ね、せっかくだから、今日はうちに寄ってって?」

「……え?」


突然の申し出に、聞き間違いかと思って、聞き返してしまった。

だって、うちに寄ってってって、僕がルカの家に? 正気か?

「いつもマンションの前でバイバイだしさ。何かきっかけがないと来ないでしょ?」

「あ、でも、そんな……」

「決まり決まり! ほら、行こう?」

「ちょ、ちょっと待ってよ……」


戸惑う僕の事はお構いなしに、グイッと腕を引っ張ってルカは歩き出した。

こうなるともう、何を言ってもルカは聞かないし止められない。

腹をくくるかと、僕は歩きながら大きく深呼吸をした。



10階建てのマンションの前に着き、僕は思わず上を見上げた。

いつもはマンションの前で別れるから、エントランスに踏み入れたのは初めてだ。

このマンションが建てられてからまだ2年ほどだから、中はかなり綺麗だった。

エレベーターに乗り込むと、ルカは7階のボタンを押す。