「はーん? 何、風見はバレンタインにキャンディもらったのか?」


その声に織原と二人で同時に振り返ると、出席簿を手にした深澤先生が立っていた。

ってか、今の話、聞いてたのかよ。


「やるじゃん、風見。キャンディ贈られるとか」

「え?」

「キャンディって何か意味あるんですか?」


ニヤニヤしながら言う深澤先生だけど、やるじゃんと言われても僕には意味が分からない。

織原もそれは同じだったらしく、先生に質問を投げた。


「はあ? お前ら全然知らないのかよ。俺みたいにイケてる大人の男になるために、少しはそういうとこも勉強した方がいいんじゃない? バレンタインやホワイトデーには、贈るお菓子にもちゃんと意味があんのよ。……あ、チョコレートは何の意味もないから安心していいよ」

「義理チョコはやっぱり、タダの義理チョコか」


得意気に話す深澤先生に対し、織原はハハハと苦笑した。

チョコレートにも何か意味があるのだとしたら、義理チョコが何か別の物に変化するのではないかと期待したようだ。

苦笑した後、少しだけがっかりしたような表情を浮かべている織原。

そんな事にも気が付かず、深澤先生は知識をひけらかすように話し始めた。