ちなみに兄貴が助けたあの子どもは、月命日に必ず手を合わせに来てくれる。

母さんはもういいのよって言うけれど、子どもの母親は命の恩人だからとこれからも必ず来ますと言って帰っていく。

その子は四月から小学生になるようで、おじいちゃんに買ってもらったというランドセルを兄貴の遺影に誇らしげに見せていたらしい。

あの時ベビーカーに乗っていたもう一人の子は三歳になり、お兄ちゃんとよく戦いごっこをして遊んでいるらしい。

幼い頃の僕と兄貴を見ているようだと、月命日の夕飯で必ず母さんは話しながら涙をこぼす。

これからもずっと、変わらずに続いていくのだろうか。



「悠真、昨日のバレンタイン、マネージャーから義理チョコもらえたぜ」


次の日、織原は登校して僕を見るなり報告しに来た。

ロッカーに荷物を詰める作業の手を止めて、一旦扉を閉めて織原の方を振り返る。

義理チョコでもかなり嬉しそうで、ニヤケが止まらないらしい。