「……そんなわけ、ないだろ」

「即否定しなくてもいいのに」


動揺を覚られないよう、素っ気なく返せばルカが苦笑いしながら本を本棚に戻しに行く。

そんな事を言われて平常心を保てるのは、モテ男だけだろ。

僕みたいに平凡以下の人間は、そんなスキル備わってないよ。

……なんて、本人に直接言えない僕はかなりのチキンだと思う。

二人で図書室をあとにし、教室へと向かう。


「そういえば、今日ってバレンタインなんだよね」

「ああ、そういえば」


ルカがふと思い出したように言ったから、僕もハッと気づいた。

朝から少し女子のテンションが違うなと思っていたけれど、今日はバレンタイン当日。

僕には全く関係のない、縁のないイベントだけど。

織原は今年、いくつもらえたかな。


「さっき図書室の窓側にいたんだけど、あそこから裏庭が丸見えなんだよね。何人かが、可愛くラッピングされた物を渡しながら告白してるのを眺めてたんだ」

「ふーん……」


裏庭に呼び出して渡して告白って、やっぱり物語の中だけじゃなくて現実にもいるのか。