「おはよう。え、急にどうしたの?」


ルカが自分の席にカバンを置く。

織原に突拍子もない質問をされながらも笑顔で聞き返すルカ。

さっきの剣幕はどこに行ったのかとツッコミを入れたいくらい、ルカは穏やかな表情を浮かべていた。


「悠真がさー、あまりに夢を持たない奴だからさー」

「……織原は夢見すぎなんだよ」


廊下でさっきの話を僕が立ち聞きしていた事にルカは気付いていないんだろう。

少し気まずさを感じながら、小さい声で僕が言う。

ルカは僕と織原を交互に見て、話の流れを汲みとったらしい。

何度か頷いて、フフッと笑った。


「ああ、そういう事? 私は運命的な出会いって信じてるよ?」

「ほら、悠真~。聞いたか?」


ルカが同調したのを見て、急に織原がドヤ顔をする。

いや、女子が夢みたいな話をするのはよくある事だろうし、ルカが同調したからって織原に論破されたとは全く思えない。

なのに、まるで僕を言い負かしたとでも言いたげな織原のこの表情がかなりウザい。


「夢は見ないより見た方がいいよ、やっぱりさ」


偉そうに僕の背中を叩きながら言う織原。