「……ごめんなさい」


ルカの勢いに圧倒されたらしく、さっきまで得意気だった女子は小さな声で謝った。

居心地が悪くなったのか、彼女は小走りでどこかへ行ってしまう。

ルカの対応に驚きながらも、僕はため息をついてしまった。

そんな態度を取れば、ルカが孤立するだけなのに。

物理の教科書を取り出して、バタンとロッカーの扉を閉め、カギをかけて教室に戻る。


「ん? どうした、悠真?」


席に戻るとまだ織原がいた。

戻って来た僕の顔を指さして、不思議そうな表情を浮かべて聞いてくる。


「別に、何もないけど?」

「そう? なんか、微妙な表情してるけど。……あ、白石さんおはよう。ねー、白石さんは運命的な出会いって信じるよね?」


まだその話題を続けるのか。

とっくに終わったと思っていたのに、織原もしつこいな。