「じゃあ、風見君の噂も当然知ってるよね?」

「噂?」

「中学の時、実のお兄さんを事故に見せかけて殺したって噂」


一瞬で背筋が凍り付くような感覚がした。

この学校には僕と同じ中学だった奴が数人いる。

入学した後、そいつらが噂をバラまいたらしく、尾ひれが付きまくって、面白おかしく脚色されて、学年中に広まった。

一時期、クラスが違うにもかかわらず、知らない人から興味本位で話しかけられていた。

僕の姿を見かけると、指さしながらヒソヒソ話が始まるし、ヤジを飛ばされた事もあった。

無反応だったのがつまらなかったのか、一週間ほどで飽きられ、何事もなくなった。

けれど真相がどうであれ、火のない所に煙は立たぬという言葉があるように、誰も僕に近づこうとはしなかった。

二年に上がって、織原と出会うまでは。