『悠真がなりたいのなら全力で応援するが、斗真が叶えられなかったから代わりに……とか思うのならやめてくれ。斗真は斗真の、悠真は悠真の人生なんだから』

『そうじゃないんだ。何でもパーフェクトにこなす兄貴がそんな風に進路で悩んでいたとか、知らなかったからさ。確かに、兄貴が叶えられなかったからっていう思いは少しはあるけれど、兄貴の本音を聞いた時、興味を持ったのは事実なんだ。……僕も深澤先生に救われたし、兄貴が目指した深澤先生のような教師を目指したくなったっていうか……』


正直に僕の気持ちを話した事が良かったのか、父さんも母さんも納得してくれた。


『悠真が決めたのなら、応援するよ。全力で頑張りなさい』


その言葉に背中を押され、僕は就職希望から大学進学希望へと進路を変更した。

昨夜のやり取りを話し終えると、深澤先生はうんうんと頷きながら顎に手を当てる。


「悠真が俺のような先生にかー」

「あ、言っておきますが、間違っても、教え子とセクシー女優の話をするような先生にはなりませんから。……でも、深澤先生のように、ひとりひとりと正面から向き合って、ぶつかり合えるような教師になりたいなって素直に思いました」

「ハハハ。そう言われちゃうと照れるんだけど」


この人は本当に褒められ慣れてないのか、顔を赤くしてそっぽを向いた。

普段からいじられる事が多いせいで、こうなったのかもしれないけど。


「それと先生。兄貴が、こっそり隠してたセクシー女優の映像作品を実は部屋で見つけちゃったんですよ」

「えっ?!そうなの?!もうー、そういう事は早く言ってよーっ!」

「両親が見たら卒倒しそうだから、先生受け取ってくれますか?」

「おーおーおー、そういう事なら仕方ないよな? 喜んで受け取ろうじゃん?」


鼻の下を伸ばしながら、僕から紙袋を受け取る深澤先生。

僕は本当にこの先生を目標にしていいのだろうか?