そして昨日の夕飯時に、ふと思い出したように父さんに聞かれたのだ。

高校を卒業した後の進路の事を。

どんな進路を希望しても、僕の意思を尊重してくれると父さんが最初に言ってくれたので、自立したいからこの家を出て就職するつもりだと言い出しにくくなった。

もちろん、その道を選んだとしてもきっと認めてはくれただろう。

けれど、あんなに頑なに『家を出たい』と言い続けていたにもかかわらず、迷いが生じたのだ。

おそらく、単純にもう家を出る理由がなくなったからだと思う。

どう言おうか悩んでいた僕を見て、父さんは一言くれた。


『斗真もそんな風に進路で悩んでいたよ。まあ、今すぐに答えを出さなくても、時間はたっぷりあるんだから、たくさん悩んで決めればいい。何かで迷っているのならいつだって相談にのるよ。父さんも悠真と一緒に悩むから。すまんな、ちょっと気になったから聞いてみただけなんだ』


兄貴も進路の事で悩んでいただなんて。

そんな風に悩んで決めた兄貴の答えが、その時なぜか自然に口から出たんだ。


『俺、教師になろうかと思ってるんだ。……兄貴が歩もうとしていた道を目指したい』


それを聞いて、父さんも母さんも驚いた表情を浮かべたし、少し慌てたようにも見えた。