僕はぼんやりと、好きなラノベやアニメに関われるような仕事ができればいいなとか思っていたけれど、兄貴が志そうとしていた教師の道に進んでみようかなと、考え直したんだ。


「その話、ご両親にもしたのか?」

「えっ? ……はい、まあ」


先生の問いかけに一瞬戸惑ったけれど、僕は素直に頷いた。

兄貴の命日を境に、少しずつ以前のような『家族』が戻ってきているような気がする。

命日の夕飯は本当にぎこちなくて、今でも思い出しただけでちょっと笑えてしまうほど。

その日の夕飯は、久しぶりにビーフシチューだった。

三人で食卓を囲みながらずっと、


『美味しいね』

『そうだな、美味しいな』

『そう? おかわりたくさんあるから、どんどん食べてね』


の繰り返しだった。

何度目かのやり取りの時、耐えきれなくて僕が噴き出したら、母さんも父さんもこらえていたのか、笑いが止まらなくなった。

家族でこんな風に笑い合ったのは何年ぶりだろう。

それがきっかけで、次の日から普通にやり取りできるようになった。

おはよう、行ってきます、ただいま、おかえりなさい……という当たり前の挨拶から、今日起きた事のプチ報告会のようなものまで、自然な流れで。