「白石さー、斗真が誰推しだったのか本当に見えなかった? 先生にお伝え出来なかった事が心残りです!って、未だに見えたりしない?」

「残念ですが、あれ以来何も映らなくなりました」


そう。

もうルカの瞳には兄貴の世界が映る事はない。

ルカの返答に深澤先生が頭を抱えた。


「あー、俺が安眠できる日、もうこないのかー」

「見栄張らずに、ちゃんと聞いとけばよかったじゃないですか」


そんなに後悔するくらいなら、僕の家を出禁になってでも聞き出すべきだったのでは?

そんな事を思いながら言うと、深澤先生は顔を上げた。


「いや、できねーだろ。悠真が俺の立場でも止めただろ?」


その前に、僕は教え子とセクシー女優の話なんかしませんって。

でも、兄貴はそれも含めた上で、深澤先生みたいな先生になりたかったって言ってたっけ。


「そういえば悠真君、大学進学に進路希望変更したんでしょう?」

「ああ、それ聞こうと思ってたんだ。白石から聞いたけど、お前、斗真の命日前までは就職希望だったじゃん? 急にどうしたの?」

「兄貴の本音聞いたら、兄貴が歩もうとしていた夢を見たくなったんだ。深澤先生のような先生になりたいって夢」


兄貴の将来の夢とか、未来の話なんか聞いた事がなかったし、お互いに話した事もなかった。