「悠真君。これからは自分が幸せになれる事を考えていこうね」

「うん?」


急にそんな事を言うルカに、不思議そうに首をかしげた僕。


「だって、しあわせを呼ぶ砂を持ってるんだから。周りの人を幸せにするのなら、まずは自分が幸せにならないと」

「……僕はじゅうぶんすぎるくらい幸せだよ。ルカが僕を見つけてくれたから」


自然と口からこぼれだす想い。

キュッと手の中にある小瓶を握りしめる。

すると、ルカがゆっくりと僕を見上げた。


「最初は迷惑がってたのに?」

「……人と関わるのが面倒だっただけ。でも今ならわかる。ルカとの出会いは運命的だったって」

「全然信じてなかったのにね、運命なんて」


僕の言葉を否定しながら、ルカはクスクスと可笑しそうに笑う。

だって仕方がないじゃないか。

そんな運命的とか、小説とか映画のような夢みたいな希望なんか……。


「悠真君。バレンタインに贈るキャンディの意味、知ってる?」


不意に聞いてきたルカに、僕は深澤先生から教えてもらった意味を思い出す。


「……その意味を知っててルカは僕に渡してきたのか?」

「そう。でも、あの時、言っても信じてもらえそうにないから言わなかった」


僕の問いかけに、フフッと笑って返すルカ。

僕はこれから先も、彼女には勝てないんだろうな。

でも、そんな人生でも悪くないかも。

ルカといればきっと、いつだってどこだって、キラキラとした眩しくて楽しい日々が待っているに違いないから。