誰からも好かれ、人望も厚かった兄貴が僕の事がうらやましかっただなんて……。


『ないものねだりってこういう事なんだよな。周りが作り上げた偶像を壊したくなくて、俺は自分で自分を押し殺した。でも悠真には俺と同じ人生を歩んで欲しくなかった。好きな物は好き、嫌いな物は嫌いと、素直に口にできる環境で生きて欲しかった。だから、これからも周りの顔色なんかうかがわないで、自分の決めた道を真っ直ぐ突き抜けていって欲しい』

「兄貴……」


フッと笑った兄貴は今度はルカに向き直る。


『白石琉花さん。俺の想いに応えてくれてありがとう。悠真の希望の光になってくれてありがとう』

「そんな……斗真さんこそ、私に希望の光を照らしてくださってありがとうございました」

『この世から去っても尚、俺の体の一部が色々なところで人の役に立てたのなら良かった。父さんも母さんもドナーカードに気付いて、俺の意思を尊重してくれてありがとう。まさか応えてくれると思わなかった』

「いつだって、自分の気持ちを素直に言ってくれたら良かったんだ。気付けなかった私たちにも問題はあるけれど」


父さんの言葉に母さんが頷きながら泣き崩れる。