「……私は斗真さんの角膜をいただいてからずっと、斗真さんが見てきた景色を見てきました。比喩表現ではなく、瞼を閉じると、映るんです、斗真さんが見てきた世界が」


ルカはそう言って、今まで見えて来た物を僕の両親に語りだした。

父さんは半信半疑の表情だったが、母さんは最初からその一つ一つを受け入れるように、時々頷く。

おそらく、母さんと兄貴しか知らない出来事を話しているせいだろう。

頷きながら涙をこぼす母さんの姿を見て、父さんも受け入れ始めたようだった。


「でも、斗真さんが私に何を伝えたかったのか、わからなかったんです。だけど、悠真君のおかげでわかりました」

「斗真さんがずっと気がかりだったのは、風見家のご家族の関係性ではないでしょうか? 斗真さんが素晴らしい息子さんだったという事はわかっています。その斗真君を失って、皆さんが生きる気力を失う気持ちもわかります。ですが、斗真さんはそれを望んでいるわけではありません。むしろ、自分のせいで家族がバラバラになったと嘆いているのではないでしょうか」

「斗真が嘆いている……?」

「風見家には悠真君という希望がまだ残されています。どうか、悠真君に目を向けてあげて下さい。彼は中学入学時から、斗真さんと比較され、周りから心無い言葉を浴びせられ、自分を見失いながらも家族に心配をかけないために何も言わずにここまできました」

「悠真、そうなのか?」


ルカの話を聞いて、両親が僕に目を向ける。