そんな彼女を見ながら、僕と深澤先生は顔を見合わせる。


「あの時買ったのって、悠真へのお土産だったのか」

「……みたいですね」

「まさか、棺に一緒に入れたわけじゃないよな? そうなると水族館で同じ物を買ったとしても、それは斗真が買った物じゃないから想いが果たされたとは言えないよな」

「お兄さんの部屋の机の中に入れてあるみたいですけど」

「よし、じゃあ今から取りに行こうか」


どこか張り切ったように深澤先生が立ち上がり、羽織っていたジャージを脱ぐ。


「行こうかって、何で先生が来るんですか」

「何でって何だよ。今日は斗真の命日だから、元々行くつもりでいたんだよっ!」


そう言って、先生は準備室の方に引っ込んだ。

……そうか、今日は兄貴の命日か。

昨日の事があったせいだと思っていたけれど、朝早く目が覚めて兄貴に顔見せに行ったのは、心のどこかで命日だと覚えていた事がそうさせたのかもしれない。


「じゃあ、キーホルダーのシーンが見えるのも命日が関係しているの?」


そう言いながら、ゆっくりと目を開けたルカ。


「移植を受けてから初めて見えた物なんだろ? そうなのかもしれないな」