兄貴の目を通して世界が見えたのなら、僕の家庭環境の事なんてすでに察しているはず。

僕は黙って首を横に振った。


「幸い、火が消えたように静かになったくらいで、不当な扱いをうけてるとかそういうわけじゃないから。兄貴の好物が相変わらず並んで、僕の好物は並ばないなって、気が付くのはそれくらいだから」

「……そう」

「それに、高校卒業したら家を出ようって考えてるんだ。まだ先生に相談してないけど……自立しようと思って」

「進学しないって事?」

「兄貴だったら大学進学考えてたんだろうけど、僕は少しでも早く自分の足で歩きたいと思って。勉強したくなったら、働きながらでもできると思うし」


ルカには、あの家から逃げ出す口実に聞こえてしまっただろうか?


「それが悠真君の本心なら、深澤先生も応援してくれるとは思うけど」

「本心だよ」


噓偽りなんかない。