「……そう。一番最初に見えたという事に何か意味があるのかなって思って。それに、しあわせを呼ぶって書いてあったし、何かワクワクする事に繋がるんじゃないかなって思ってね」


ルカはそう言ってキュッとキーホルダーを握りしめて大事そうに胸に当てる。

失明して、目が見えるようになった上、そんな非現実的な事が起きれば、誰でも何かの暗示ではないかと思うのかもしれない。

もし僕がその立場でも、きっとそうしていただろう。

運命的な出会いを否定していたとしても、水族館までキーホルダーを買いに行っちゃうかもしれないな。


「お兄さんの部屋には、亡くなってから入った?」

「入ってない。いなくなる前から……ずっと」


母さんが毎日掃除をしに入っているみたいだけど、僕は兄貴が亡くなる前からずっと入っていない。

兄貴は僕がいない間に入って、本棚からラノベを拝借してたみたいだけど、全然気が付かなかった。

そもそも、人の部屋に無断で入るとかルール違反だろ。

ただ、読みたくもないジャンルを無理に読んで、僕との距離を詰めたかったのかどうなのか、兄貴の本心まではわからないけれど。


「……悠真君、ご家族とは?」


少し聞くのにためらったようだった。

ルカの問いかけは、少し声が小さかった。