「あー……いや、兄貴に報告する事があって」

「……そう」


母さんはそれだけ言うと、部屋を出て行った。

特に興味ないんだろうな。

ボトルキャンディを抱えて、僕も自分の部屋に戻った。




「おはよう」


待ち合わせの7時50分。

僕がマンションの前に行くと、ルカはすでに来ていて、僕に向かって手を振りながらそう言った。


「おはよう。ルカ、早いな」

「悠真君が約束忘れて先に行っちゃったらどうしようと思ってね。嫌でも駅に行くにはここ通らなきゃならないから、早く来て待っていればいいかなって思って」

「さすがにそこまで薄情じゃないけど」


僕が言うと、ルカは肩をすくめて微笑む。

久しぶりにルカと駅までの道を歩く。


「ゆっくり眠れた? もう兄貴の見ていた世界は見えないだろ?」


兄貴の目的は果たされたはず。

何気なく聞いてみたら、ルカは首を横に振った。