「もうルカの瞳には映らないんだろうけど、こんな奇跡を起こしてくれてありがとな。……じゃあ、ルカとの待ち合わせ遅れるのまずいから行くわ」


遺影に向かってそう言って、ゆっくりと立ち上がる。


「……あ、そうだ。この前、急にクッキーくれた人を思い出したって言ったじゃん? バレンタインにクッキー贈る意味って、友達でいましょうって意味なんだってさ。だからあの時、慌てて取り換えに来た人がいたんだな。花言葉みたいに色んな意味があって、バレンタインやホワイトデーって大変だな。兄貴は知ってて返してた?……僕はルカに何かを返そうかな」


深澤先生が得意気に語っていたのを思い出して、クッキーの意味を調べた僕。

そうしたら、クッキーの意味は『友達でいましょう』だったから、あの時あの人が、血相抱えて取りかえに来た理由が納得できた。


「悠真? こんな朝早くからどうしたの?」


話し声が聞こえて不審に思ったのか、母さんが不思議そうな表情で顔を覗かせた。