「最初、ルカからその話を聞いた時は、何て馬鹿な事を……って思ったわ。でも、あまりに必死だったし、非現実的ではあるけれど、主治医の先生も何も言わなくなった以上、ルカの見えている世界は本物なのだと主人とも話し合ってね。ルカの言う通り、角膜を提供してくれた方に少しでも恩返しができるのならばと、この街への引っ越しを決めたのよ。幸い、主人も都内勤務だし、ここは通勤圏内だから問題ないって。ルカも仲のいい友達を切り捨ててまで決意したのならってね」


ルカの母親が補足するように言うと、隣で深澤先生が感心したようにため息をついた。


「なかなか決断できる事じゃないですよ。それを実行してしまうなんて、すごいです」

「普通なら提供者やその家族とは接触できないはずなんです。でも、こんな奇跡が起きたのなら、私たちも応えるべきだと思っただけです」

「悠真君に会いたかったって言ったのは、本心だよ。誰にも心を開かない悠真君をどうにかして救おうって思った。生きる気力を取り戻したかった。誤解を解きたかった」


転校してきてからのルカの不思議な言動はすべて繋がった。

前から知っていた、友達になりたかった、会いたかった……。

それなのに僕は、ルカのその言動を兄貴と繋がりたかったからだと勝手に決めつけ、ルカを危ない目に遭わせてしまった。