「残留思念……っていうの? この場合」

「え?」


悲しいとか苦しいという気持ちよりも先に、なぜか笑いがこみあげてきた。

不意に呟いた僕に、深澤先生は悲しそうな目で僕を見る。


「悠真?」

「ほら、先生。僕の言った通りだったじゃないですか。……まさか、死んだ後で角膜提供した相手にこんな事言わせるなんて。兄貴、頭良すぎでしょ。最高の仕返しだよ。誰も思いつかない、考えすら浮かばない」


死者からの伝言。

あの血の海の中で、僕を見ながら命が尽きても別の形で会いに行こうと決めていたのかもしれない。

それが残留思念としてルカに現れたのだろう。

臓器移植を受けた人が、提供者の記憶や嗜好を受け継ぐという話を聞いた事があるし、そういう映画や小説も見た事がある。

それと同じようなものなのかな……。

もしかしたら兄貴の他の臓器を移植した人にも、さらなる追い打ちをかけるために、すでに僕のすぐ近くに現れているかもしれないけれど。