「読唇術に慣れてきたら、何となく何を言っているのか読み取れるようになったんだよね。ちなみに、深澤先生も出てきましたよ」

「え、俺? なぁんでよ?」

「お兄さんの高校で、担任でしたよね?」

「そうだけど。……え、あー、なるほどね」


深澤先生はピンときたらしく、一人で納得しながらウンウンと頷く。


「なるほどってどういう事ですか? 一人で納得してないで、ちゃんとわかるように説明してくださいよ」

「だからー、白石が見えていた物って、生前に斗真が見ていた物なんだよ」


先生にせがむように言うと、あっさり先生は説明してくれた。

つまり、ルカの瞳に映る世界は、全て兄貴が今まで見てきた世界だという事。

兄貴の角膜が映写機となり、瞼の裏がスクリーンとなって、映画のように映し出されていたという事だろう。


「そう。だから私は悠真君のお兄さんの顔は知らないけれど、悠真君の事は知ってるし、深澤先生の事も知っていた。あと、出てきたのは悠真君のご両親だと思う」

「ルカに何が起きているのかはわかったし、僕の事を知っていたというのも理解した。信じてもらえないかもしれないって言ってたけど……うん、大丈夫。信じるよ。ずっと前から見てたって、そういう事だったんだな」

「うん。私も途中から、これは角膜を提供してくれた人が今まで見ていた物なんだってわかったから、どこの誰か知るために手掛かりがないか必死で探したんだ。そうしたら、美浜海岸駅が出てきたの」