でも見えるだけで声が聞こえるわけじゃないので、何を言っているのか全くわからなかったが、どうやらその人は自分に向かって怒っているようだった。

最初はその現象に戸惑ったし、眠っても眠れた気がしなくて、両親にこんな事が起きると打ち明けたそうだ。

もちろんルカの両親もその話を半信半疑で聞いていたのだが、ルカが冗談を話しているようにも見えず、主治医に相談しに行ったらしい。


「お医者さんもウーンと唸って、首を傾げるばかりだった。それもそうだよね。だって見えているのは私だけだし、夢と勘違いしてるんじゃないかって言われたくらいだもの」


途中で身振り手振りを交えながら、思い出し笑いをするルカ。

確かに、ある日突然そんな事を相談されても、反応に困ると思う。


「でもね、暗い場所が怖くて眠る時に目を閉じる事ですら恐怖だったから、目を閉じても暗くならないこの現象に少しずつ慣れていくようにして、楽しむ事にしたの。見ていたら、いつの間にか眠れるようになっていたし、疲れも感じなくなっていったしね」


そう言って、またルカは紅茶のカップに口を付けた。

そして、話を続ける。