ココアパウダーが練りこまれているとはいえ、これは本当に美味しい。

それを見たルカは目を細めて笑い、そして口を開いた。


「移植手術後のトラブルは何も起きなかったのはさっきも話したよね? 炎症とか拒絶反応もなかったし、日常生活において、不自由に感じる事は本当に何もなかった。すべてが順調で両親ともにホッとしたんだ。でも、二週間ほどたったある日、奇妙な事が起きたの」


彼女が話す奇妙な出来事とは次のようなものだった。

夜、寝ようと思い、いつものようにベッドに入ってルカが目を閉じると、急に瞼の裏で見た事も無い風景が広がった。

まだ寝入っていないのに、まるで夢の中にいるような現象にルカは驚いて目を開けたらしい。

目を開ければそこはオレンジ色の常夜灯がついた自分の部屋で、ベッドに入ってからまだ数秒しか経過していない状態。

今のは何だったのか不思議に思いながらも、目を閉じると再び同じ風景が映し出された。

見た事も行った事もない知らない場所で、学生服を着た知らない男の子が自分に向かって何かを言っている。