そして確認はしていないが、事故で兄貴を失い悲しみに暮れていた僕の両親は、兄貴の意思を尊重したという事だ。

兄貴の事だから、おそらく角膜だけでなく、他の部分もきっと提供しているだろう。

命を落とした後まで、見知らぬ誰かのために役に立とうとするなんて、兄貴らしいな。


「……いや、でも待って。ルカは兄貴がこの街に住んでいて、尚且つ僕が兄貴の弟だという事までわかった上で、ここに引っ越してきたんだろ? この手紙はその情報には繋がらないよな?」


そうなのだ。

移植する側もされる側もお互いの素性は絶対に知る事はない。

だからルカが僕らの素性を知る事は不可能。

じゃあどうして、確信を持ってこの街に引っ越してきたんだ……?


「ここから先の話は、受け止めにくいとは思うけれど、即否定しないでね」


ためらいがちにそう言って、ルカは何度か瞬きをした。

僕と深澤先生が自然に顔を見合わせ、同時に頷く。