そんなに時間を置かずにルカが自室から戻って来て、元の場所へ座る。

そして、手にしていた一通の便箋を差し出した。

それを見た僕は、ハッとして目を見開く。

この前ここにお邪魔した時に見た、赤いギンガムチェックの便箋。


「悠真君、やっぱりこの便箋に見覚えがあったんだね」

「……これ、俺も見た事がある。斗真の遺影のそばに積み重ねられてた便箋だ。……えっ、じゃあ、まさか、白石の角膜を提供したのは……」


深澤先生も相当驚いたらしく、今までに見た事がないほどに目を丸くさせていた。


「そうです。多分だけど、私はおそらく悠真君のお兄さんの角膜を移植されたんだと思います」


ルカの口から信じられない言葉が飛び出して、僕は思わず立ち上がってしまった。

亡くなった兄貴の目が、絶望したルカに光をくれた?


「兄貴がドナー登録してたなんて、知らなかった。……先生知ってました?」

「いや、俺も知らない。ただ、和室には額に入れられた感謝状がいくつも飾られてて、よく見てなかったけど、斗真の奴、色んな所で人を助けてたんだなって思ってたけど、もしかしたらその一つが献眼への感謝状だったかもしれない」


深澤先生も知らなかった事。

あの兄貴の事だから、きっとドナーカードを持っていたのだろう。