ただ、良かったね……と言っていい話の流れではない。

思わず開きかけた口を、慌てて閉じた僕。


「手術は成功して、特に炎症なども起きず、少しずつ視力も回復していって、今、私はここに存在してる。提供してくれた人がどのような状態でこの世を去ったのかはわからないけれど、その人の分までこの目に色々な物を映していこうって思った」


僕はただ黙って、一生懸命に話すルカの話を聞いていた。

チラッと横目で深澤先生の方を見たけれど、今まで見た事がないほど真剣な表情をしていた。

おそらく先生もこういう人に出会ったのは初めてなのだろう。


「暗闇の中で絶望していた私に生きる光をくれた人に故人だけど、どうしてもお礼を言いたかった。でも決まりだから、提供者の情報は教えてもらえないのだけど、手紙を書けば届けてくれるってお医者さんに言われて、私は何度も手紙を書いた。もちろん私の事も、どこの誰なのかは相手方に伏せる感じだったから、手紙に自分の素性は書けないし、封をする前にお医者さんが内容をチェックする形でね。そんな状態だったから、提供してくださったご家族にもお会いする事は叶わなかったんだけど……ちょっと待っててね」


そう言うとルカは立ち上がってリビングを出て、玄関脇の自分の部屋に入った。

何かを取りに行ったのか?

そんな風に思いながら、深澤先生と顔を見合わせて、ルカが戻って来るのを待つ。