「ただ、希望はまだ残されていたの。角膜移植をすれば、また見えるようになる、光を取り戻せるって言われて。その話を聞いて、最初は素直に喜んだ。……でも、考えてみればすぐにドナーがすぐ見つかるわけじゃないのよ。だって、早く見えるようになりたい、光を取り戻したいと私が願う事って、代わりに誰か死んでくださいって願っているようなものだから」


確かにそうだ。

生きている人から移植できる箇所とは違って、角膜は亡くなった人からの移植でしかない。

でも、角膜移植をすれば見えるようになるという話を聞けば、誰だって早く見えるようになりたいって思うのが普通だろう。

僕がその立場でも普通に喜ぶだろうけれど、だからって、早く誰か死んで、自分に角膜提供してくださいって、そんな酷い事を願っているわけではない。

そうではないけれど、早く見えるようになりたいと願えば願うほど、誰かの死を願っているようにルカは思えて、願う自分を許せなくなったのだろう。

でも今、ルカが見えるようになっているという事は、亡くなった誰かから角膜をもらったという事だ。


「事故で光を失ってから一年ほど。ちょうどこの時期だった。ドナーが見つかったと連絡がきて、私は角膜移植をしたの。つまり……亡くなった方から、角膜を頂いたの」


どこかで亡くなった誰かの目がルカの目になって、生き続けているという事。

姿形は違えど、困っている人の希望の光になって生きている。

それでいいじゃないか。