「びっくりしたでしょう?」

「……はい」


ルカの診察中、ルカの母親が申し訳なさそうに声をかけてきた。


「本当に悠真君にはご迷惑をおかけしっぱなしでごめんなさいね」

「いえ、僕の方こそ申し訳ございません」


そもそも、僕がルカのそばから離れなければこんな事にならなかったのだ。

こじつけた言い訳で自分を正当化した。

ルカがこんな目にあったのは僕のせいだ。

グッと両腕をクロスさせて自分の腕を掴むと、痛みが走った。

そういえば、ルカが僕の腕を爪を食い込ませるほど強く掴んでいたっけ。

ブレザーを脱ぎ袖を捲り上げてみると、かなりの力で掴まれていた事を証明するかのような傷がいくつもできていた。

隣にいた深澤先生も阿部先生も、ルカの母親も息をのんだくらい。

青くなっている部分もあれば、かなり深くえぐれて出血しているところもある。

ルカにとって、それぐらいあの空間はそれほど恐怖だったという事だ。