電話を切った後、スマホのライト機能でわずかながらだけど辺りを照らす。

ルカは僕の胸に顔を押し付けたまま、顔を上げようとしない。

スマホを床に置き、僕は再びルカの背中をトントンと優しく叩く。

大丈夫、大丈夫だからと、呪文のように何度も繰り返しながら。

そのうち、ガシャンッという音がして、ガラガラと扉が開き、光が差し込んできた。


「大丈夫か?! おい、二人とも無事か?!」

「白石さん、大丈夫?! すぐ病院に行きましょう。家の人も迎えに来ますから」


深澤先生と共に現れたのは保健の阿部先生だった。

目いっぱい開けた扉から光が差し込んで、倉庫内を明るく照らす。

光に気が付いたルカは恐る恐る顔を上げた。

その拍子に彼女のメガネが床に落ちる。

顔は涙でグシャグシャで、さっきむしってしまいそうなほど引っ張っていたから髪もグチャグチャ。

まだ震えは止まっていないようで、阿部先生がそっとルカの肩を抱いて体育倉庫の外へと誘導する。


「先生、苦手どころの話じゃない!尋常じゃなかった!あれは、一体……」

「すまん。まさか、忠告してすぐにこんな事になると思わなかった。本当、悠真がいてくれて助かった、サンキュー」

「いや、偶然だったし、お礼を言われる事じゃ……」


深澤先生が深刻そうな表情のままお礼を言うけれど、お礼なんて言われる資格、僕にはない。