ザーッと倉庫の床を滑っていくスマホ。

その行方を目で追いながらも、僕はルカの腕を掴む。

物凄い力で振り払われそうになり、ルカの手が僕の眼鏡を吹っ飛ばす。

それでも負けないように僕はルカの腕を離さなかった。


「助けてっ! お願い……っ! 置いて行かないでっ! 私から光を奪わないで、お願い……っ! 一人にしないでえええっ!」

「ルカ!」


発狂するルカを僕は力いっぱい抱きしめた。

事情はよくわからないけれど、ルカのこの状態は尋常じゃない。

置いて行かないで? 光を奪わないでって何だ?


「ルカ、大丈夫……。一人にしないから大丈夫だよ。僕がいる。ルカを置いてなんか行かないよ……」

「……くっ」


小さな子をあやすように、ゆっくりと優しく背中をトントンと叩きながらルカに何度も何度も大丈夫大丈夫と繰り返し声をかける。

最初はパニックでバタバタと暴れていたが、少しずつ落ち着いてきたのか、小刻みに身体を震わせながらも僕にしがみついて、シクシクと泣き出した。

暗所恐怖症? いや、それにしてはかなりパニック状態になっていると思う。

深澤先生に忠告されてはいたけど、もしかしてコレが起きるから、気をつけろって事?

おそらくさっきの先生の調子だと、ここまでひどくなる事は先生も把握していないだろうな。