黒服とホストは似てそうで
全く違う。
改めて僕はそう思った。

「これは、アマネ様。それとも、
今日はアマネ君でしょうか?
アポ取りの主を隣に連れて
いらっしゃるなら、
お客様ではなくホストの
アマネ君扱いでよろしいか?」

さすが元カリスマ黒服は、
ゲストでない相手にもニコヤカ
目が笑ってない対応だ。

「アマネでいいっすよ。僕も
素でいきますんで。この際
隠してもしゃーなきっすよ。」

良いように言えば、黒服は
キャストのマネージャーで、
客への付け回しとか、
色管理とかする。
対して
ホストは
フリーランスで営業もする
自分資本ガテン系だ。

相手は駆け出しから、
自分のシノギを稼ぐ為
何人もキャストを管理するが、
ホストは自身でプロデュースして
マネージングもする。

「それじゃ、アマネ君ね。
いやあ、君が現役の時から
本当に噂は聞いてたからね。
ゲストで出入りするように、
なるとは思ってなかったよ。
それこそ、その顔としゃべり、
ミナミなら日本一になれたん
じゃないかなあ。女なら、
うちに来て欲しいところだよ」

黒服にホスト。
大半の両者男。
共にクズ率が高い業界で、
目の前にいる元黒服の
『Q』オーナーは数少ない
良心的なタイプらしい。
言い方がな!!

そーゆーとこが、タモツと
ウマが合うのかもしれん。

「で、今日はアマネ君は、
タモツオーナまで連れて、
こっちの村まで探し人だとか」

女子とならここらで、
スイーツでもいっとく?って
時間の喫茶店。
『Q』オーナが指定した店だけ
あって、貸し切りだ。

でないと、この時間のサ店は
それこそ下い色管理ネタ満載の
黒服だらけ。

妻探しどころじゃない。

「なんすよ。そちらでお世話に
なってたと思うんですけど、」

僕は『リリーメイプル』で見せた
妻の画像を表示させた、
電話を低いテーブルに置く。

「あれ?これは、チクリのアザミ
じゃないか。意外な人物をまた
聞いてきたよね。知り合い?」

チクリのアザミ?
僕の耳に聞き慣れない言葉が。

「アマネの会社の者で
行方を探してまして。
今日も出でしょうか?」

動揺する僕の変わりに、
タモツが聞き込んでくれる。

「ふうん。そういう事にして
おくかな。残念だが、
アザミは1年前に3ヶ月だけ
ヘルプ扱いで入店した子でね。
今は来てないんだよ。まあ、
居にくくなったんだろね。」

僕の電話を机から取り上げて、
画像を確認する相手の
物言いと、

さっきの単語が
僕は気になって、

「あのチクリって、もしかして
イジメでやめたんすか?」

やや表情を消し去り気味で
問いかけた。

「おやアマネ君て、そんな顔
するんだな。まあ、待って
くれよ。イジメというか、
キャストには煙たがられたな」

「アマネ!」

思わず席を立ちそうになる
僕をタモツが抑えた。

いくら僕でも妻への冷遇は
見逃せない。そりゃ僕も
大概だと解ってるけどな!

「最初は、ほら彼女、美人だけど
気が強い感じだから、キャスト
達も、つっかかってはいたんだ
。こっちもハンカの内偵かもっ
て思ったぐらいだからね。」

『Q』オーナーが、
テーブルの向こうで慌てて、
口ではやんわり止めながらも
僕の胸元に手を当てて押し返す。
しまった、
黒服は
けっこう格闘も出来るヤツが
いるのを忘れてた。

「ハンカって?」

僕は隣のタモツを振り返る。

「国税の夜対の部署。『繁華街』
だから『ハンカ』。隠語だ。」

知らなかった!何それ!

「じゃあ、チクリのアザミって」

タモツが重ねて質問をすると、
肩眉を上げて、

「ゲストのツケ払いを、自分の
口座に振り込ませて、店に
全額入金せずに、使い込んで
たキャストを告発したんです
よ、彼女。それこそ、ママの
側近達でしてね。アマネ君も
御存じのサクラ辺りがね。」

苦そうな顔を『Q』オーナーが
見せた。

「え?!全然知らなかったけど」

確かに『Q』での接待には、
ママ周辺サクラまで僕は
指名してきた。
会計は月末支払いで、
会社カードだから僕の管理じゃ
ないけど、、

「ちゃんと、連絡したけど。
自宅に。会社に連絡したら、
支払い管理は奥様だと言われ
て。アマネ君のところに、
二重払い請求していたので、
間違いの分は次回利用で
御破算願いたいってね。」

「なるほど返金じゃなく、次回
から横領者がタダ働きで返すか」

タモツが隣で感心して
口笛を軽く吹く。

「これもアザミの提案ですよ。」

僕はそれを聞いて思わず、

「本当に彼女がそんな事?を?
信じらんねーなぁ。なんだか
別人みたいに感じるけど。」

自分の電話の中で、
睨んで映る妻の画像を見つめた。
そもそもお嬢様という
アドバンテージを抜いても
接客業、ましてや
ホステスなんて不向きなタイプ。

そんな妻が横領まで見つけた?

もう別人なのでは?

疑う気持ちが出て来た僕を
見透かして、

「良ければ上で防犯みても、
こっちはかまわないよ。
本人かどうか判るでしょ?」

『Q』オーナーが、くいっと
顎を上にしゃくる。

「本当に、いいんでしょうか。」

もちろん、その案に
タモツが驚いた声を上げた。

「その代わりね、彼女の履歴書も
見せるから、伝えてよ。また
戻ってくれないかって。彼女、
目付きも態度も悪かったけどね
太客が付いてて、問い合わせ
今だに多いんだよね。今度は
自分が担当するからってね。」

只でさえ村のキャスト、
その身バレネタを話させたのに
防犯映像まで見せる?

しかも、オーナー自ら担当って
ママ候補だろ?

「「・・・・・」」

僕はなんだか、気分が良くなく、
タモツは、そんな僕の心中察して
言葉も出ない。
くそ!!

「ああ、自分ね、元ミナミ出身。
チクリって、まあ告げ口する
って意味なんだけど、アザミの
刺す雰囲気が病み付きになる
のも、含んで呼んでたんだよ」

「どーりで。」

僕は表情を失くした目で
相手を見る。

ミナミは、国内二大夜街の西拠点
夜街の聖地の1つだ。
実は、町ともホスト数は
変わらないほど。
個性的な客層とホスト層
でもある。

顔が良くて、容姿が良くて、
それだけが
ホステスの条件じゃないのは、
ホストも一緒だ。

たまに、顔もスタイルも全然
醜聞ぐらいのホストでも
しゃべりで客が着きまくるのが
いてる。
どーゆーわけか、
マニアな太客が着くのだ。

こいつ、、ぜってー、
僕と同類てヤツだ。

「ご好意、あざっす。」

ここは穏便に胸糞礼を言って
おいて
僕とタモツは早速、
連れられ、
『Q』オーナー室 に招待された。

あと1時間もすれば、
黒服達が出勤してくる中

「どう?アザミは、その赤の
ドレス。あ、後ろ姿か。彼女、
いつもその席なんだよね。
後ろ姿でも判るよね?ほら、」

1年前の防犯映像には、
確かに
僕が見つけた
深紅のドレスを纏う女の
後ろ姿が映っている。

「これ?アマネじゃないか?」

タモツが映像の隅を指さす。

「うん、僕だわ、、」

深紅の後ろ姿の女が
見る先には
無限ループ横領サクラ達と戯れる
接待中の僕が
映っている。

「全然、知らんかった。」

僕は 唖然と 1年前の自分を見た。

この
後ろ姿の妻は、
どんな顔をして
僕を見ていたのか

サクラ達と騒ぐ僕も

今の僕には、もう解らない。