灰になった僕は
キヨヒコに
会長室直通エレベーターで
オフィスの地下駐車場に
そのまんま降ろされ、
役員入り婿待遇で許された
白の通勤車に押し込められた。
「アマネはとりあえず帰れ!
後の事はしゃーない、オレが
引き受けるわ。で、カレンさん
探せ!やれるだろ?アマネよ」
そう言って
キヨヒコは僕の首に下げた
営業1課長表記の社内IDを
外すと、
自分の首にひっかけ
『バタン!!』
車のドアを勢いよく閉める。
そんな強引なキヨヒコが
恨めしく
僕は少々不貞腐れた顔をしつつも
エンジンをかけて、
ウィンドウを下げる。
「会長御用達の弁護士が見つけ
られんもん、探せるって、
キヨは本気で思ってんの?」
「健闘を祈る!!やれ!」
窓越し
片手で首から下げた
僕のIDを摘まんでブラブラと
振るキヨヒコは満面の笑顔だ。
考えれば、
直通エレベーター様々。
なんせ例の受付嬢、ヤシロ女史の
いるエントランスを
通らなくてすんだわけで、
このルートはキヨヒコの英断だ。
「だよなー。」
仕方なく僕は観念して
車のライトを合図に点滅させると、
ミラーに
キヨヒコを映しながら
マンションに向け
車を走らせ
今にいたる。
しっかし、この2週間
外食!外食!外食三昧!
まともな家メシを食っとらん
がな!僕!
さすがに妻が家出で、
いつものハウスメイドを寄越して
とは妻の実家には言えない。
「学生ん時でさえ、家メシ
食いっぱぐれた事ねーもんな」
実は
オフィスから
そう遠くはない
自宅マンションは、そこそこの
値段であろう立地にある、
コンシェルジュ付。
まあ、全部妻の実家の不動産ね。
もちの、ろんで。
「後で、コンシェルジュさまに、
なんか食うもんお願いすっか」
程なく着いた僕は
マンションパーキングの定位置に
車を停めて、
管理スタッフにキーを渡す。
コンシェルジュにランチを依頼
して僕は今朝とかわらず
妻のいない家に
入る。
毎日あんなにビクビクしながら
深夜の玄関を開けていた
僕でさえ、
さすがにこの2週間は
堪える。
「そろそろ、自炊すっかなっ?」
さらに言えば
妻が居れば嫌がるだろう、
キッチンでうがいをするのが
この2週間の癖になりつつある
わけで。
「よく、考えたら自炊なんか、
上京すぐ以来かもーなー。
よし、何んかあるかもーっと」
すっかり独り言も多くなって、
そのままモダンな冷蔵庫に。
そもそも冷蔵庫なんざ、
ミネラルウォーターしか目に
してなかった。
だって、
妻お気に入りで、
拘りのキッチンだぞ?
そうそう、荒せねーよ。
『パタン』
冷凍庫を開ける。
僕は
地方も地方、ど島出身。
田舎もんだ。
大学と同時に上京して、
始めたホストバイトのお陰で
なんやかんやと、
女子手作り飯にあやかれ
有難いことに
毎日三食
浮かせれてきたからなー。
クズと言われりゃ、そーかも?
いや、この顔を使った
生存本能だよねー。
と、
ハウスメイドが何か作り置き
してるかもって、
「うお!!さすが!プロは
違うな!色々あるわー!、、
んん?この字って、、。」
作り置き容器に丁寧に貼られた
付箋には、見覚えのある文字が
並んでいるけど?これ、
妻だ。
「え?カレンさん?なんで?」
??る?
妻は生粋の箱入りだ。
そんでもって、
さながら悪役令嬢な容姿と
性格をしている。
一見ね。
「あの実家なんか、絶ってー
料理人がメシ作ってんのに
カレンさんが、料理?
うわ!もしかして、彼氏用?
う、2週間前のメシって
なんだっ、ヤバ、覚えてねぇ」
パカッと容器を開けて、
付箋紙を、見る。
いや、いっつも
遅くに帰ってくっと
映え映えの
プレートがダイニングに
用意してあったから、
てっきり
出来るハウスメイド作だと
思ってた僕。
無数の容器付箋には~
一部見やると
ロッシーニ風ハンバーグ
トリュフのボロネーゼ
カクテルシュリンプ
ね。書いてる。
食った。気がする。よーな。
ロッシーニがわからんけど!
あ、でもこれ
希望的観測欲だ、参った。
「もしかして、『彼氏』とやら
の手掛かりが、これ?
まて!まてまてまて!
ガチでやる気入ったー!」
料理教室にでも通っていたのか?
そこで相手と出会うとか?
冷凍庫に鎮座する
容器が忌々しく見えて、
僕はいきおい良く
冷凍庫ドアを叩き閉めた。
「こんちくょう。ナメんなよ、
こーなりゃサンチュアリを
ガサ入れしてやる。
久しぶりにやってやらぁ。」
僕は、そのまま
妻のプライベートルームに
向かった。
夫婦の寝室を真ん中に挟んで、
デカいウォークインクローゼット
を互いに持っている。
所謂サブルームだ。
「1番は、鞄だな、やっぱ。」
下っぱホストん時、
よく店の金とかロッカー荒らして
逃げた同僚とか、
先輩の上客を取ってバックレの
後輩を探すのに
キヨヒコと2人、
野郎の部屋を家捜したこと
幾度となくだったなあ。
だから、キヨヒコは僕に
『アマネなら出来るだろ?』と
言ったのだ。
「うわ!鞄、多っ!」
サブルームだけでも20畳は
ありそうな所にウオール棚が
並んで、鞄もギッシリ。
「男なら、ジャケットとパンツの
ポケットなんだけどなあー。」
妻の服は、どっちかとゆーと
シックだ。
暗いわけじゃなくて、
ややつり目だから、
甘色フワフワが似合わない
とか思ってんだろなー。
「さて、いっちょやるか!」
僕はまず、
鞄に手を掛けた。
男のポケットには
何らかの
ブツが残ってる事が
多い。
ライター、ハンカチ、メモ 、
たまに既婚の証、エンゲージとか
ポケットに入れっぱがある。
そんで、
こーゆーのは
けっこー交友関係を
洗うといろいろ出てくるん
だけど、
「女子はやったこと無いしなー」
違和感ない鞄達。
誰かに贈られた物もなさげ。
そーゆーのって、
わかるよね?
え?僕が妻に?大抵一緒に
本人を連れて行くから
ちゃんと妻好みのモノを
贈ってるぞ!
「んー、、、」
金やカードの流れで、
名刺をやりとりするよーな
交流相手なら
等の昔に
弁護士が見てるだろうしな。
電話の記録は論外、
一発目に調べるブツだ。
僕は、幾つかの鞄を さらに
裏返して調べていく。
品のいい、ブランドモノ。
とくに問題ない。
たまに、
バックインバックもある。
クラッチバッグか。
パーティー用とかだろーな。
女モノにも詳しくないとね、
ホストは。
「鞄の中を出す時に落ちたモノ
とかは、こーゆーとこにある。」
んだよね。
僕は、ハンギングされている
洋服の下を
今度は手で探りながら
床も屈んで見ていく。
「見事になんもねーな。」
まあ、それこそ
ハウスクリーニング掛けられる
ことも想定内。
反対側のハンキングも。
あ、そういや、靴ん中に切符を
入れる野郎いたな。
へんな癖だよ。
「うん? 今なんかあった?」
ハンキングする洋服、
ワンピースの奥に、服がある。
サマーワンピースか?にしては
色が派手いな?
左右に服を掻き分けて、
奥から出してみる。
派手な赤のホルダーネックの
「これ、ドレス、かよ、て!
あ、バッグインバックの
クラッチも赤っぽいか、、
にしても、おい!これっ」
手に持つハンガーのドレスを
見てネームを確認。
間違いない。
これは、夜の服ん店のヤツだ。
夜の歓楽街には
その道御用達の店も
入ってて、
キャバ嬢や、ホステスを
相手に、
手頃値段でカクテルドレスを
置いてる店がある。
独特のデザインネームタグ。
「間違いねーな。」
思えば、
さっきのクラッチバッグも
このドレスと合わせてる?
に、見えないこともない。
「て、ことは?」
そう、彼女、妻カレンは、
僕の知らない間に ホステスを
していたっちゅーこと?!
なぜに。
『フロントコンシェルジュです、
ご依頼のランチ、お待たせ
いたしました。お持ちしました』
ついでに、このタイミングで
下で頼んだランチが 玄関に
着たってか?!
キヨヒコに
会長室直通エレベーターで
オフィスの地下駐車場に
そのまんま降ろされ、
役員入り婿待遇で許された
白の通勤車に押し込められた。
「アマネはとりあえず帰れ!
後の事はしゃーない、オレが
引き受けるわ。で、カレンさん
探せ!やれるだろ?アマネよ」
そう言って
キヨヒコは僕の首に下げた
営業1課長表記の社内IDを
外すと、
自分の首にひっかけ
『バタン!!』
車のドアを勢いよく閉める。
そんな強引なキヨヒコが
恨めしく
僕は少々不貞腐れた顔をしつつも
エンジンをかけて、
ウィンドウを下げる。
「会長御用達の弁護士が見つけ
られんもん、探せるって、
キヨは本気で思ってんの?」
「健闘を祈る!!やれ!」
窓越し
片手で首から下げた
僕のIDを摘まんでブラブラと
振るキヨヒコは満面の笑顔だ。
考えれば、
直通エレベーター様々。
なんせ例の受付嬢、ヤシロ女史の
いるエントランスを
通らなくてすんだわけで、
このルートはキヨヒコの英断だ。
「だよなー。」
仕方なく僕は観念して
車のライトを合図に点滅させると、
ミラーに
キヨヒコを映しながら
マンションに向け
車を走らせ
今にいたる。
しっかし、この2週間
外食!外食!外食三昧!
まともな家メシを食っとらん
がな!僕!
さすがに妻が家出で、
いつものハウスメイドを寄越して
とは妻の実家には言えない。
「学生ん時でさえ、家メシ
食いっぱぐれた事ねーもんな」
実は
オフィスから
そう遠くはない
自宅マンションは、そこそこの
値段であろう立地にある、
コンシェルジュ付。
まあ、全部妻の実家の不動産ね。
もちの、ろんで。
「後で、コンシェルジュさまに、
なんか食うもんお願いすっか」
程なく着いた僕は
マンションパーキングの定位置に
車を停めて、
管理スタッフにキーを渡す。
コンシェルジュにランチを依頼
して僕は今朝とかわらず
妻のいない家に
入る。
毎日あんなにビクビクしながら
深夜の玄関を開けていた
僕でさえ、
さすがにこの2週間は
堪える。
「そろそろ、自炊すっかなっ?」
さらに言えば
妻が居れば嫌がるだろう、
キッチンでうがいをするのが
この2週間の癖になりつつある
わけで。
「よく、考えたら自炊なんか、
上京すぐ以来かもーなー。
よし、何んかあるかもーっと」
すっかり独り言も多くなって、
そのままモダンな冷蔵庫に。
そもそも冷蔵庫なんざ、
ミネラルウォーターしか目に
してなかった。
だって、
妻お気に入りで、
拘りのキッチンだぞ?
そうそう、荒せねーよ。
『パタン』
冷凍庫を開ける。
僕は
地方も地方、ど島出身。
田舎もんだ。
大学と同時に上京して、
始めたホストバイトのお陰で
なんやかんやと、
女子手作り飯にあやかれ
有難いことに
毎日三食
浮かせれてきたからなー。
クズと言われりゃ、そーかも?
いや、この顔を使った
生存本能だよねー。
と、
ハウスメイドが何か作り置き
してるかもって、
「うお!!さすが!プロは
違うな!色々あるわー!、、
んん?この字って、、。」
作り置き容器に丁寧に貼られた
付箋には、見覚えのある文字が
並んでいるけど?これ、
妻だ。
「え?カレンさん?なんで?」
??る?
妻は生粋の箱入りだ。
そんでもって、
さながら悪役令嬢な容姿と
性格をしている。
一見ね。
「あの実家なんか、絶ってー
料理人がメシ作ってんのに
カレンさんが、料理?
うわ!もしかして、彼氏用?
う、2週間前のメシって
なんだっ、ヤバ、覚えてねぇ」
パカッと容器を開けて、
付箋紙を、見る。
いや、いっつも
遅くに帰ってくっと
映え映えの
プレートがダイニングに
用意してあったから、
てっきり
出来るハウスメイド作だと
思ってた僕。
無数の容器付箋には~
一部見やると
ロッシーニ風ハンバーグ
トリュフのボロネーゼ
カクテルシュリンプ
ね。書いてる。
食った。気がする。よーな。
ロッシーニがわからんけど!
あ、でもこれ
希望的観測欲だ、参った。
「もしかして、『彼氏』とやら
の手掛かりが、これ?
まて!まてまてまて!
ガチでやる気入ったー!」
料理教室にでも通っていたのか?
そこで相手と出会うとか?
冷凍庫に鎮座する
容器が忌々しく見えて、
僕はいきおい良く
冷凍庫ドアを叩き閉めた。
「こんちくょう。ナメんなよ、
こーなりゃサンチュアリを
ガサ入れしてやる。
久しぶりにやってやらぁ。」
僕は、そのまま
妻のプライベートルームに
向かった。
夫婦の寝室を真ん中に挟んで、
デカいウォークインクローゼット
を互いに持っている。
所謂サブルームだ。
「1番は、鞄だな、やっぱ。」
下っぱホストん時、
よく店の金とかロッカー荒らして
逃げた同僚とか、
先輩の上客を取ってバックレの
後輩を探すのに
キヨヒコと2人、
野郎の部屋を家捜したこと
幾度となくだったなあ。
だから、キヨヒコは僕に
『アマネなら出来るだろ?』と
言ったのだ。
「うわ!鞄、多っ!」
サブルームだけでも20畳は
ありそうな所にウオール棚が
並んで、鞄もギッシリ。
「男なら、ジャケットとパンツの
ポケットなんだけどなあー。」
妻の服は、どっちかとゆーと
シックだ。
暗いわけじゃなくて、
ややつり目だから、
甘色フワフワが似合わない
とか思ってんだろなー。
「さて、いっちょやるか!」
僕はまず、
鞄に手を掛けた。
男のポケットには
何らかの
ブツが残ってる事が
多い。
ライター、ハンカチ、メモ 、
たまに既婚の証、エンゲージとか
ポケットに入れっぱがある。
そんで、
こーゆーのは
けっこー交友関係を
洗うといろいろ出てくるん
だけど、
「女子はやったこと無いしなー」
違和感ない鞄達。
誰かに贈られた物もなさげ。
そーゆーのって、
わかるよね?
え?僕が妻に?大抵一緒に
本人を連れて行くから
ちゃんと妻好みのモノを
贈ってるぞ!
「んー、、、」
金やカードの流れで、
名刺をやりとりするよーな
交流相手なら
等の昔に
弁護士が見てるだろうしな。
電話の記録は論外、
一発目に調べるブツだ。
僕は、幾つかの鞄を さらに
裏返して調べていく。
品のいい、ブランドモノ。
とくに問題ない。
たまに、
バックインバックもある。
クラッチバッグか。
パーティー用とかだろーな。
女モノにも詳しくないとね、
ホストは。
「鞄の中を出す時に落ちたモノ
とかは、こーゆーとこにある。」
んだよね。
僕は、ハンギングされている
洋服の下を
今度は手で探りながら
床も屈んで見ていく。
「見事になんもねーな。」
まあ、それこそ
ハウスクリーニング掛けられる
ことも想定内。
反対側のハンキングも。
あ、そういや、靴ん中に切符を
入れる野郎いたな。
へんな癖だよ。
「うん? 今なんかあった?」
ハンキングする洋服、
ワンピースの奥に、服がある。
サマーワンピースか?にしては
色が派手いな?
左右に服を掻き分けて、
奥から出してみる。
派手な赤のホルダーネックの
「これ、ドレス、かよ、て!
あ、バッグインバックの
クラッチも赤っぽいか、、
にしても、おい!これっ」
手に持つハンガーのドレスを
見てネームを確認。
間違いない。
これは、夜の服ん店のヤツだ。
夜の歓楽街には
その道御用達の店も
入ってて、
キャバ嬢や、ホステスを
相手に、
手頃値段でカクテルドレスを
置いてる店がある。
独特のデザインネームタグ。
「間違いねーな。」
思えば、
さっきのクラッチバッグも
このドレスと合わせてる?
に、見えないこともない。
「て、ことは?」
そう、彼女、妻カレンは、
僕の知らない間に ホステスを
していたっちゅーこと?!
なぜに。
『フロントコンシェルジュです、
ご依頼のランチ、お待たせ
いたしました。お持ちしました』
ついでに、このタイミングで
下で頼んだランチが 玄関に
着たってか?!