とりあえず、
『Q』のオーナーに履歴書も
見せてもらい、
タモツを車に乗せて
帰路へとハンドルをにぎる僕。
そろそろ、この界隈も
タクシー多くなる時間だかんな!
「アマネワイフが『Q』のママ
候補になるとは、何が起こって
るんだ?アマネ、大丈夫か?」
助手席で長い足を組ながら
タモツが僕に聞いてくるけど、
こっちも泣きたいほど
知りたいわい!!
「あ、あぁ。僕も訳わからん。
履歴書の住所。あれも覚え無い
しな。もしかしたら、家出先、
そこかもしれん。けど、、」
考えたくもない!
そこに男といるとか?!
僕のジャケットポケットには
さっきゲットした
妻の履歴書アドレスをメモった
禍々しい
紙切れがある。
そんなイラつく僕にタモツは
豪奢な腕時計をチラ見して、
「そろそろ店の時間もあるから、
その住所までは付き合えないが」
優雅なまでに
自分の電話を取り出した。
予想外に時間を食ったから
店のマネージャー達に
メッセージを入れるんだろな。
「いや、大丈夫。何ならキヨ呼ぶ
し、今日はテンパってっから、
明日にすんわ。タモツサンキュ」
気を取り直して僕が礼を言うと、
「後日報告しろよ。気になる。」
タモツは
どこか思案顔で、
運転する僕の肩をポンポンと
叩いた。
面倒見がいいタモツだ。
そりゃここまで付き合わされたら
気になるだろーしな。
そんなこんなで、
とりあえず、タモツを店がある
町のアーチ下で下ろす。
「ラジャラジャー。じゃな。」
もうこの頃には
同伴前の出勤ホストがチラホラ
たむろってるんだよな。
タモツが、片手だけ上げて
アーチをくぐっていくのを
見届ける。
夜の街に消えるタモツ。
僕は思い出した様に
カーステをつけて、
車をマンションに
走らせた。
「今日は、さすがに何んか、
飯でも作っかなー。あ、でも
冷凍庫、作り置きあったっけ」
BGMを聴きながら、
一瞬買い物でもすっかなと
頭に浮かんだのを、
冷凍庫の中身を思い出して、
僕はそのまま、
数時間前に出たマンションに
戻ったのだった。
「ふーっ。ただいま、、って、
誰ーれもいねーけどなっと?」
カードキーで開けた玄関ドアから
エントランスに足を踏み入れると
自動でインテリア照明が
点いて、室内BGMも流れる。
そしたら、
エントランスクローゼット
で靴を脱いで、
妻の靴に変わりがないのを
見て、タメ息だな。
ルームシューズに変えて、
ドデカイ窓硝子から眼下の街を
見下ろしながら
リビングのソファーに
ジャケットを放り出すときた。
妻が、家出した僕の
帰宅ルーティン。
洗面所でなくリビングダイニング
のアイランドキッチンで
手洗いとうがいをする
この背徳感!も、
そろそろ
侘しい、だよなー。
「無駄に全部の部屋がデカイ
から、ダメなんだってさー、、
カ、カレンさん?え?戻った」
普通に
この2週間の癖をさらけだした
僕は、
30畳はあるやろリビングの
片隅、大画面液晶の
前にあるスツールに、
後ろを向いて座っている存在が
あるのに気がついて、
驚いた!!
それは、まごうことなき
我が
妻の後ろ姿じゃん!!
そこに、妻が座ってる。
帰っとるがな!!
僕は驚いて、出しっぱなしの
水道を慌てて止めると
気もそぞろに
濡れた手を
キッチンタオルで拭きながら
そこそこ距離ある
リビングのーーその先座る
妻に叫んだ。
「参ったよー、カレンさん!
僕この2週間、本当心配した
んだよー。ねー、彼氏んとこ
行くってさ、何?僕への
当て付け?怒ってんの?ね」
僕は、そう言いながら
キヨとタモツに
『家に、妻座っとった!』と
メッセージを入れとく。
「え、なんでこっち向かないの、
あれかな?ヤシロ女史の写真?
全然違うから。あの日の泊まり
だって、本当仕事だし。ね」
そして妻の実家にも連絡だ。
て、おい!
何でこんな時に留守電?!
何の為のお手伝いシモセキだ?
留守電に、
『アマネです。カレンさん、
家に帰ってきましたー。』
だけ入れとく。
で、
「カレンさん?何で何もいわない
んだろ?そんな風に意地はる
けど、カレンさんも僕に隠して
る事あるよね?悪いけどさ、
クローゼットから赤いドレス、
僕見つけたんだよ。あれ何?」
僕は電話を
ダイニングテーブルに置くと、
前髪をかき上げて
今だ、背中を見せる
妻の方へ向かう。
僕も
そろそろ限界ぞ、いろいろ。
「なあ、カレン。こっち向いて、
顔、見せて。別に僕、怒って
ないし。なんで、僕の接待店で
働いてたとか、何やいわんよ」
そもそも2週間!!だかんな!
我が妻が家出して!
「カレン?あんま背中見せてっと
とりあえず後ろからヤルよ?」
泣いとるのか?
弱冠夜モードが出始めて、
僕は後ろ姿の妻の顔を見んと
前に周りこんだ
つもりが、
「な、な、に、、」
何故か
大画面にむかって座っていた
妻が、
前に周りこむとキッチンに
向かってスツールに座っている。
「あ、れ?」
後ろ姿のままの妻。
いつの間に?
「カレン~、またぁツンデレお嬢
かぁ~。何とかゆーてよ。」
今度は肩に手をかけた、ら、
あれ?距離まちごたかな?
手が空をからぶった。
「へ、!マジ?なんで?」
相変わらず、妻は背中だけを
見せて
今度は1歩前に立ってる。
こーなりゃ、言い訳とか後!
僕は後ろからバグをかます勢いで
妻に飛び掛かる!
なんなら、
そのままいたしちゃる!
「ええ、とりあえず抱かして!」
けど、両腕が また空を抱いて、
1歩先に妻が後ろ姿で 立つ。
さっきの、繰り返し!
エンドレス!
もう1度前に周りこむ、けど、
また
そこには後ろ姿の妻が立つ。
「!!!」
掴もうとして、空を手で掴む。
「くーっ。」
ジーザス!!
そんな風にして
気がついたら、
僕達はリビングを1周していた。
その間、
妻は一言もしゃべらないって?!
ありえん。はあー、はあー、
息が上がるわ。
『♪~♪~♪~』
リビングにある固定電話の音楽が
鳴るけど、
僕はそのまま、後ろ姿の妻を
見たまま、動けない。
『ピーと鳴りましたら伝言を。』
皮肉にも留守番電話を案内する
声は、妻の声で、
『アマネーー!カレンが帰った
っとは本当かっ!!すぐ行くぞ
!首洗ってまっとけ!いいな』
糞うるさい
義理父の罵声が録音されて、
『ブーブーブー』
今度は
ダイニングテーブルに置いた
電話がバイブを鳴らし、
『今からそっち行く。カレンさん
よく話して、謝れよ!アマネ』
キヨヒコのメッセージが
表示される。
僕は、ぼーぜんとして
未だ振り向かない妻に
叫ぶ。
「ねぇカレン、なんかゆーてよ」
どこか
『Q』で見た映像の中の
後ろ姿のようで、
まるで2次元の映像みたいな
後ろ姿は、
島のオバアの言葉を
思い出させて、
「オバア、カレン、が、」
僕は、
後ろ姿の妻を凝視して呟いた。
『Q』のオーナーに履歴書も
見せてもらい、
タモツを車に乗せて
帰路へとハンドルをにぎる僕。
そろそろ、この界隈も
タクシー多くなる時間だかんな!
「アマネワイフが『Q』のママ
候補になるとは、何が起こって
るんだ?アマネ、大丈夫か?」
助手席で長い足を組ながら
タモツが僕に聞いてくるけど、
こっちも泣きたいほど
知りたいわい!!
「あ、あぁ。僕も訳わからん。
履歴書の住所。あれも覚え無い
しな。もしかしたら、家出先、
そこかもしれん。けど、、」
考えたくもない!
そこに男といるとか?!
僕のジャケットポケットには
さっきゲットした
妻の履歴書アドレスをメモった
禍々しい
紙切れがある。
そんなイラつく僕にタモツは
豪奢な腕時計をチラ見して、
「そろそろ店の時間もあるから、
その住所までは付き合えないが」
優雅なまでに
自分の電話を取り出した。
予想外に時間を食ったから
店のマネージャー達に
メッセージを入れるんだろな。
「いや、大丈夫。何ならキヨ呼ぶ
し、今日はテンパってっから、
明日にすんわ。タモツサンキュ」
気を取り直して僕が礼を言うと、
「後日報告しろよ。気になる。」
タモツは
どこか思案顔で、
運転する僕の肩をポンポンと
叩いた。
面倒見がいいタモツだ。
そりゃここまで付き合わされたら
気になるだろーしな。
そんなこんなで、
とりあえず、タモツを店がある
町のアーチ下で下ろす。
「ラジャラジャー。じゃな。」
もうこの頃には
同伴前の出勤ホストがチラホラ
たむろってるんだよな。
タモツが、片手だけ上げて
アーチをくぐっていくのを
見届ける。
夜の街に消えるタモツ。
僕は思い出した様に
カーステをつけて、
車をマンションに
走らせた。
「今日は、さすがに何んか、
飯でも作っかなー。あ、でも
冷凍庫、作り置きあったっけ」
BGMを聴きながら、
一瞬買い物でもすっかなと
頭に浮かんだのを、
冷凍庫の中身を思い出して、
僕はそのまま、
数時間前に出たマンションに
戻ったのだった。
「ふーっ。ただいま、、って、
誰ーれもいねーけどなっと?」
カードキーで開けた玄関ドアから
エントランスに足を踏み入れると
自動でインテリア照明が
点いて、室内BGMも流れる。
そしたら、
エントランスクローゼット
で靴を脱いで、
妻の靴に変わりがないのを
見て、タメ息だな。
ルームシューズに変えて、
ドデカイ窓硝子から眼下の街を
見下ろしながら
リビングのソファーに
ジャケットを放り出すときた。
妻が、家出した僕の
帰宅ルーティン。
洗面所でなくリビングダイニング
のアイランドキッチンで
手洗いとうがいをする
この背徳感!も、
そろそろ
侘しい、だよなー。
「無駄に全部の部屋がデカイ
から、ダメなんだってさー、、
カ、カレンさん?え?戻った」
普通に
この2週間の癖をさらけだした
僕は、
30畳はあるやろリビングの
片隅、大画面液晶の
前にあるスツールに、
後ろを向いて座っている存在が
あるのに気がついて、
驚いた!!
それは、まごうことなき
我が
妻の後ろ姿じゃん!!
そこに、妻が座ってる。
帰っとるがな!!
僕は驚いて、出しっぱなしの
水道を慌てて止めると
気もそぞろに
濡れた手を
キッチンタオルで拭きながら
そこそこ距離ある
リビングのーーその先座る
妻に叫んだ。
「参ったよー、カレンさん!
僕この2週間、本当心配した
んだよー。ねー、彼氏んとこ
行くってさ、何?僕への
当て付け?怒ってんの?ね」
僕は、そう言いながら
キヨとタモツに
『家に、妻座っとった!』と
メッセージを入れとく。
「え、なんでこっち向かないの、
あれかな?ヤシロ女史の写真?
全然違うから。あの日の泊まり
だって、本当仕事だし。ね」
そして妻の実家にも連絡だ。
て、おい!
何でこんな時に留守電?!
何の為のお手伝いシモセキだ?
留守電に、
『アマネです。カレンさん、
家に帰ってきましたー。』
だけ入れとく。
で、
「カレンさん?何で何もいわない
んだろ?そんな風に意地はる
けど、カレンさんも僕に隠して
る事あるよね?悪いけどさ、
クローゼットから赤いドレス、
僕見つけたんだよ。あれ何?」
僕は電話を
ダイニングテーブルに置くと、
前髪をかき上げて
今だ、背中を見せる
妻の方へ向かう。
僕も
そろそろ限界ぞ、いろいろ。
「なあ、カレン。こっち向いて、
顔、見せて。別に僕、怒って
ないし。なんで、僕の接待店で
働いてたとか、何やいわんよ」
そもそも2週間!!だかんな!
我が妻が家出して!
「カレン?あんま背中見せてっと
とりあえず後ろからヤルよ?」
泣いとるのか?
弱冠夜モードが出始めて、
僕は後ろ姿の妻の顔を見んと
前に周りこんだ
つもりが、
「な、な、に、、」
何故か
大画面にむかって座っていた
妻が、
前に周りこむとキッチンに
向かってスツールに座っている。
「あ、れ?」
後ろ姿のままの妻。
いつの間に?
「カレン~、またぁツンデレお嬢
かぁ~。何とかゆーてよ。」
今度は肩に手をかけた、ら、
あれ?距離まちごたかな?
手が空をからぶった。
「へ、!マジ?なんで?」
相変わらず、妻は背中だけを
見せて
今度は1歩前に立ってる。
こーなりゃ、言い訳とか後!
僕は後ろからバグをかます勢いで
妻に飛び掛かる!
なんなら、
そのままいたしちゃる!
「ええ、とりあえず抱かして!」
けど、両腕が また空を抱いて、
1歩先に妻が後ろ姿で 立つ。
さっきの、繰り返し!
エンドレス!
もう1度前に周りこむ、けど、
また
そこには後ろ姿の妻が立つ。
「!!!」
掴もうとして、空を手で掴む。
「くーっ。」
ジーザス!!
そんな風にして
気がついたら、
僕達はリビングを1周していた。
その間、
妻は一言もしゃべらないって?!
ありえん。はあー、はあー、
息が上がるわ。
『♪~♪~♪~』
リビングにある固定電話の音楽が
鳴るけど、
僕はそのまま、後ろ姿の妻を
見たまま、動けない。
『ピーと鳴りましたら伝言を。』
皮肉にも留守番電話を案内する
声は、妻の声で、
『アマネーー!カレンが帰った
っとは本当かっ!!すぐ行くぞ
!首洗ってまっとけ!いいな』
糞うるさい
義理父の罵声が録音されて、
『ブーブーブー』
今度は
ダイニングテーブルに置いた
電話がバイブを鳴らし、
『今からそっち行く。カレンさん
よく話して、謝れよ!アマネ』
キヨヒコのメッセージが
表示される。
僕は、ぼーぜんとして
未だ振り向かない妻に
叫ぶ。
「ねぇカレン、なんかゆーてよ」
どこか
『Q』で見た映像の中の
後ろ姿のようで、
まるで2次元の映像みたいな
後ろ姿は、
島のオバアの言葉を
思い出させて、
「オバア、カレン、が、」
僕は、
後ろ姿の妻を凝視して呟いた。