翌日、ドキドキしながら登校をすると、梶君はもう先に教室にいて、私の顔を見ると、
「おはよう」
 と言った。
「お、おはよう……」
 どぎまぎし、いつもより小さな声で挨拶を返す。
 梶君が私の顔をじっと見つめてきたので、私は気恥ずかしくなって、そそくさとカバンを机の横に掛けると、椅子に腰を下ろした。いつもなら、振り返って雑談をするのだけれど、今日は緊張していて、彼に声をかけることができない。
(梶君、私の小説を読んで、どう思ったかな……)
 何か言ってくるかなと、期待半分、不安半分で、机の上を見つめていたら、つんつんと背中をつつかれた。
「うひゃあ」
 私の変な叫び声を聞いて、梶君が笑った気配がした。振り返ると、
「今日、部活ないけど、一緒に帰れる?」
 と、問いかけられた。
「う、うん。大丈夫……」
「小説の感想、その時に話す」
 ぎくしゃくとした動きで頷いた私を見て、梶君は、ふっと唇の端を上げた。