何の前触れもなく、飛行機の機内で何かの破裂音が響いた。
 乗客に動揺が走り、すぐに客室乗務員が「原因究明までしばらくお待ちください」とアナウンスする。
 機内には白い煙が立ち込めてきて、それとほぼ同時に酸素マスクが落ちてきた。乗客はみな不安の声を上げて、客室乗務員たちはそれを必死になだめ続ける。
 やがて飛行機は激しく揺れ始めた。まるで、レールのないジェットコースターを走るように。飛行機は、加速度的に地上へと落下していく。
 もう上か下かもわからず、様々なものが宙に浮いている。
 そしてわずか数十秒後、飛行機は海面へと墜落した。

 大空に広げられた巨大な両翼は、青い海の真ん中に沈んでしまった。
 海面には砕けた破片が散らばっており、わずかにのぞかせる飛行機の機体からは黒煙が立ち上っている。その光景は、まるで地獄のようだった。
 声の高い女性のアナウンサーは、必死に現場の様子を中継していた――。

『乗員乗客合わせて五百二十六名を乗せた航空機は――』
 乗員乗客五百二十六名を乗せた航空機が、海面に墜落した。

 現時点で死傷者の数は不明。
 後に、これは歴史に残る大事故となった。