思い返せば、良いことなんて何もなかった人生だったように思う。

 せっかく手に入れた幸福も、ひとたび油断をすればあっけなくこぼれ落ちていくからだ。
 どうしてこんなにも、苦しみながら生きていかなければいけないのだろう。
 私がほしいものは、たった一握りの幸福だけでいいのに。

 もし時間をすべて巻き戻せるなら、次はもっとうまくやれるはずだ。
 そんなことを願っても、都合よく世界は回らない。

 それでも、これはたとえばの話だけれど。
 もし、あの瞬間に戻ることができたなら、

――次こそは、君の手だけは離したりしないだろう。