「海里、さっきはありがとな。足のこと気にしてくれたんだろ」
タピオカを飲みながら俺の隣を歩いていた零次が、声をかけてくる。
「あ、うん」
「お礼に、タピオカを上手く飲むコツ教えてやるよ。容器の真ん中じゃなくて、端っこにストローをさして、容器を傾けて、ストローを底よりちょい上で止めてみ? そうやってから、タピオカをストローで端に追い詰めて飲むようにしたら、上手に飲める」
俺は零次の言う通りにして、ほうじ茶ミルクのタピオカを飲んだ。
「あ、美味い」
確かにタピオカがモチモチしていて、触感がクセになる。
「最悪! あたし、飲むの失敗した!!」
俺の前を歩いている奈緒が、急に大きな声を上げた。
「私も失敗したわ。何でタピオカって、こんなに残るのかしらね」
奈緒の隣にいる美和が、嫌そうな顔をして言う。
奈緒と美和が持っている容器は、ストローがジュースを多めに吸い上げたみたいで、タピオカだけが何十個も残ってしまっていた。
……中に残るって、そういうことか。
「二人はたまってるの?」
奈緒が後ろに振り向いて、首を傾げる。
「いや、たまってない。零次がやり方教えてくれたから」
「はぁ? ちょっと零次、なんで私達には教えなかったのよ! 私に一泡吹かせてやろうとでも思ったわけ?」
美和は零次を睨みつけて、声を上げた。
「ひぇっ! 美和ちゃん怖い!!」
零次は慌てて、俺の後ろに隠れる。俺はそれを見て、呆れたように笑った。
それから俺達は観覧車などの絶叫系でないのばかりにのって、遊園地を楽しんだ。