「うっ。……本当に、殺すの?」
腹を足で踏まれた。うめき声を漏らしながら問うと、父さんは顔を歪ませて笑った。
「〝殺すの?〟か。まるで死ぬのが嫌みたいなセリフだな。よかったじゃないか、やっと死ぬことができるんだから。それともまさか本当に死ぬのが嫌なのか? それなら、殺す前に、抵抗できなくなるまで痛めつけてやるよ」
そう言うと、父さんは地べたに落ちていたぬいぐるみで俺の口を塞いで、俺の頭を壁に叩きつけた。
頭が猛烈な痛みに襲われた。声を出せたら、絶対叫んでいた。
激痛に悶えて顔をゆがめる俺を見て、父さんは二ヤっと、悪魔のように笑った。両腕の肘、両足の太もも、膝、ふくらはぎ、脛、脇腹、それに火傷した鎖骨など、身体のいたるところを蹴られた。
「うう、うっ。う、あ……」
十発くらい蹴られたところで、耐えるのが限界になった。身体中が悲鳴を上げている。もう、何もできない。
「ぐっ!!」
腹を足で踏まれてえづく。
……辛い。……苦しい。 ……死ぬ。……クソ。
阿古羅に反抗するって言ったのに、これじゃあ少ししかできてないじゃねぇか。
俺、このまま死ぬのかなぁ……。父さんに殺されて。
……嫌だなぁ。嫌だけど、どうしようもないのかなぁ。殴られた頭と、何度も蹴られた身体が痛すぎて、ろくに動けもしなければ、喋る気力もわかないし。
「ハッ。所詮お前は口だけだな。俺に反抗しようとしても、力じゃ叶わないとわかるとすぐに諦める。本当は、死ぬのが嫌だなんて思ってないんだろ。そんなんだからすぐに諦められるんだ」
「うっ」
「なにかいいたそうだな。とってやるから、言いたいことがあるなら言ってみろよ」
そういうと、父さんは俺の口からぬいぐるみをはぎ取った。
「……しっ、死ぬのは……いっ、嫌だ」
余りにぽろっと、本音が漏れた。
苦しくて喋る気力もなかったハズなのに、なぜかそう言えた。
約束をしたからだろうか?
そんな約束を守る力なんて、もう自分にはないというのに。
「アハハハハ! そうか。嫌かぁ? 残念だなあ、それなのに、俺に散々いたぶられた後で、車に轢かれて死ぬことになるなんて」
父さんは命乞いをする俺を見て声を上げて笑った。
このままだと、殺される!!
「やっ、やめろ……」
息も絶え耐えになりながら、俺はいった。
「やめろ? 奴隷の分際で俺に命令するのか?」
俺は、父さんを思いっきり睨みつけた。
「何だその目は? ナメてるのか?」
口の中にぬいぐるみを詰め込まれ、右手の人差し指の骨を第二関節まで折られた。
異様なほど熱い熱と痛みに襲われる。ぬいぐるみが唾でぐっしょぐしょに濡れた。痛すぎて、涙が滝のように溢れ出す。こんなのただの拷問だ。