「動画を撮らないと殺すって言われたのか?」
俺は返答を聞くのが怖くて、震えながらその言葉を言った。
「……ああ。卒業までに動画を撮らないと殺すって言われた。それがあったから、俺はお前のことを助けた後、あんな意味深な言葉を言って、お前の自殺を止めたりしたんだよ。――お前が自分を大切にすればするほど、酷い虐待の動画を撮れる可能性が高まると思ったんだ」
心臓をわしづかみされたかのような衝撃に襲われる。
「……じゃあ、零次は俺を騙してたのか?」
冷や汗が頬を伝い、俺は震えながらその言葉を口にした。
「ああ。俺はお前が命のありがたみが分かればわかるほど、酷い虐待の動画が撮れるんじゃないかと想ったんだ。だからお前に、自分の命を大切にしろっていった。
……カメラを渡すところまでは、計画は一応順調だった。お前を助けてしまったのはイレギュラーな事だったけど、それ以外は順調だった。ものすごい虐待の映像が撮れたしな。問題はその後だった。……お前が、自殺を考えたのが問題だった。……映像を観て自殺をしようとしてると気付いた俺は、録画をやめるのと、お前の自殺を止めさせるのが目的で江の島に行った。……そして、同居をしようってお前に言った」
「それの何が問題なんだよ?」
「わからないか? 俺がやるべきことは録画を止めることと、自殺をやめさせること。その二つだけで良かったんだよ。……同居なんて、提案すべきじゃなかったんだ。だって同居をして仲良くなったら、お前を救いたいと思ってしまうだろ。……映像を警察に提出して、お前の父親に裁きを受けさせてやりたいって思ってしまうだろ。それじゃあダメだったんだ。……俺は自分が殺されないために親父に動画を渡さなきゃいけなかった。そうしなきゃいけなかったんだよ!!」
零次は声が枯れる勢いで泣き叫んだ。