「できた。黒髪に白がよく映えるね」
 すぐにダージルは一歩引いて、満足げな顔になった。グレイスも笑みを浮かべる。
「ありがとうございます」
 実際、ジャスミンは綺麗だった。髪に飾ったらかわいいだろう。今は自分で見えないけれど。
 そこへマリーもやってきた。
「あら、かわいいわね。素敵よ」
「ありがとう、マリー」
 そちらを見て、グレイスはマリーにもお礼を言った。マリーは振り返って、なにやら使用人と話をしていたらしいロンを呼んだ。
「ロン様! 私にも摘んでくださいませんか?」
 ロンはマリーの声に反応してこちらを向き、笑みを浮かべて近寄ってきた。
「おや、グレイスさん、綺麗だね。マリーも欲しいのかい」
「ええ! 私には合わないでしょうか?」
「そんなわけはないだろう。どの一輪がいいかな」
 マリーとロンはそんなほのぼのとしたやりとりをはじめた。どの花が美しいか、など選びはじめる。グレイスはダージルとはたでそれを見守りつつ、感謝していた。
 マリーは気を使ってくれたのだ。グレイスが居心地良いようにと。まだ一緒に過ごすのが数度目のダージルと上手くやれるようにと。
 この優しい従姉妹が一緒で本当に良かった。グレイスは感謝と安堵を同時に覚える。
 そこへ、すっと手が伸ばされた。グレイスの腰に回る。
 そちらを見ると、ダージルが腕を回して軽くグレイスを抱いたところで。
「素敵なご夫婦だね」
 マリーとロンを指して言っているのはすぐにわかった。そしてその中に含まれている意味も。
 自分とも『素敵な夫婦』になれたらいいと。そういうことだろう。
 グレイスは笑みを浮かべた。「ええ」とだけ返事をする。
 別段、拒否もしなければ嫌だとも思わなかった。そう感じられたことが、グレイスには安心、だった。自分が上手くやれているという事実だったのだから。