フレンの言ったことは曖昧だったので、グレイスは首をかしげた。
 もうたくさん反省したし、これ以上の反省点はわからない。
「え、……ええと……?」
 疑問の声が出てしまった。グレイスが『わからない』と思ったと察したのだろう。フレンは、ふっと表情を崩した。ちょっと悲しそうな顔になる。
「来週の外出。謹慎で、なくなってしまわれたでしょう」
「ええ……」
 そのどこが反省だというのか。自分の自業自得だ。
 グレイスがまだわからないという顔をしたからか。フレンは困ったように笑う。
「私は、随分楽しみにしていたのですよ」
 フレンの悲しそうな表情の意味。グレイスは理解した。
 理解、したが……。
 直後、信じられない気持ちになった。
 フレンが?
 楽しみに?
 してくれていた?
 それは勿論、遊びに行けることではないだろう。フレンはお付きとして来てくれるのだから。
 でも、この言い方ではまるで『グレイスと遊びに行ける』ということを楽しみにしていたようではないか。
 いえ、そんなことはただの思い上がり。きっと違う意味……。
 グレイスは動揺しつつも自分に言い聞かせたのだけど、胸が高鳴ってしまうのはどうしようもなかった。
「そ、……そうなの。それは……」
 それはすまなかったわ。と、言うつもりだった。とりあえず、楽しみをふいにしてしまったのだからそこは謝らないと、と思って。
 けれどその言葉は出てこなかった。フレンがグレイスの傍らに屈んで、その手が伸ばされたのだから。ワンピースの膝に重ねていたグレイスの手へ。
「せっかくのお嬢様と二人でのお出掛けだったのです。あそこへ向かいましょう、お食事はなにをいただきましょう、と考えて……」
 グレイスは目を丸くしてしまう。このような言い方。まるで、……。
 ……まるで、恋人同士の、デートのよう。